苻琳

苻琳（ふ りん、生年不詳 - 384年）は、五胡十六国時代の前秦の皇族であり、第3代君主である苻堅の五男として生まれた。字は永瑶。

苻琳は、兄に第4代君主となる苻丕、皇太子苻宏、平原公苻暉がおり、弟には広平公苻熙、鉅鹿公苻叡、中山公苻詵がいる。

生涯

苻琳は、文武両道に秀でた才能の持ち主であった。特に武勇においては、500斤（約125kg）もの弓を引き絞り、その矢で鋳鉄や鋼の板を射抜くほどの腕前であったと伝えられている。また、山水に親しめば、詩文を巧みに詠み、その作品は美しく洗練されていたという。その才覚は、当時の人々からも傑出していると認められていた。

苻堅の時代には、河間公に封じられ、その才能を高く評価されていたことが窺える。

384年7月、前秦に反旗を翻した慕容沖が、首都長安からわずか200里（約80km）の地点まで迫るという事態が発生した。これに対し、苻堅は平原公苻暉に5万の兵を与えて慕容沖を迎え撃たせ、苻琳を中軍大将軍に任じて苻暉の後続とした。

苻琳らは鄭西に進駐したが、慕容沖軍の猛攻を受け、大敗を喫してしまう。この敗戦を受け、苻堅は尚書姜宇に3万の兵を与え、苻琳と共に灞上へ進ませて慕容沖を撃たせた。しかし、苻琳は再び慕容沖軍に敗れ、姜宇は戦死、苻琳自身も流れ矢に当たり、若くして命を落とした。

苻琳は、文武両道に優れた才能を持ちながらも、戦乱の時代に翻弄され、志半ばで非業の死を遂げた悲劇の皇族であったと言える。

参考文献

『晋書』載記第14　苻堅載記下
『資治通鑑』巻105
* 『十六国春秋』巻41

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