毛当

毛当（もう とう）

毛当（生年不詳 - 384年）は、五胡十六国時代の前秦に仕えた軍人です。武都郡の出身で、その勇猛さで前秦の勢力拡大に大きく貢献しました。

生涯

毛当は前秦に仕え、将軍としてその才能を発揮しました。370年には、名将・王猛の指揮下で前燕討伐に参加し、晋陽攻略後にはその守備を任されています。その後、前禁将軍に任じられ、着実にその地位を確立していきました。

373年、毛当は鷹揚将軍・徐成と共に3万の兵を率いて剣門から梁州・益州へ進軍。同時に、益州刺史・王統と秘書監・朱肜も2万の兵を率いて漢川へ侵攻しました。東晋の梁州刺史・楊亮は、巴獠1万余りを率いて青谷で迎え撃ちましたが、毛当らはこれを打ち破り、西城まで退却させました。朱肜が漢中を攻略すると、毛当も剣閣を攻略し、着実に戦果を挙げています。

楊安、王統、朱肜らが梓潼や綿竹で東晋軍と交戦している間、毛当らは進撃を続け、ついに成都を陥落させました。この報を聞いた東晋の益州刺史・周仲孫は南中へ撤退。毛当らはさらに進軍し、益州・梁州をほぼ平定し、西南夷の邛・莋・夜郎といった地域も前秦に帰順させました。これにより、梁州・益州は前秦の領土となり、毛当は梁州刺史に任じられ、漢中に鎮守することとなりました。その後、右将軍に昇進しています。

378年、苻堅が東晋領の襄陽征伐を敢行すると、毛当は領軍将軍・苟池、強弩将軍・王顕と共に4万の兵を率いて武当から出撃し、諸軍と合流して襄陽を攻撃しました。その後、苟池、石越と共に5万の兵を率いて江陵に駐屯。東晋の車騎将軍・桓沖は7万の兵を擁して襄陽救援に向かおうとしましたが、苟池軍を恐れて進軍できず、上明に留まりました。

379年、毛当は王顕と共に2万の兵を率いて、襄陽から倶難、彭超と合流し淮南を攻めました。東晋の右衛将軍・毛安之と游撃将軍・司馬曇は4万の兵を率いて堂邑に軍を進めましたが、毛当は毛盛と共に騎兵2万を率いて堂邑を急襲し、毛安之軍を破って潰走させました。

その功績により、379年7月には平南将軍・徐州刺史に任じられ、彭城に鎮することとなりました。380年12月には東豫州刺史に任じられ、許昌に鎮守。その後、左衛将軍に任じられています。

383年、東晋の車騎将軍・桓沖が前秦征伐の兵を挙げ、10万の兵を率いて襄陽へ侵攻。さらに劉波、桓石虔、桓石民らを派遣して沔北の諸城を攻撃しました。苻堅の命により、毛当は征南将軍・苻叡、冠軍将軍・慕容垂、驍騎将軍・石越と共に歩騎5万を率いて襄陽救援に向かいました。前秦軍が沔水まで進むと、桓沖は上明まで撤退しました。その後、鎮軍将軍に任じられました。

しかし、383年11月、苻堅は淝水の戦いで歴史的な大敗を喫し、前秦に服属していた諸部族が反乱を起こしました。毛当は3千の兵を率いて洛陽へ向かい、平原公・苻暉の補佐に当たりました。武平侯にも封じられています。

383年12月、丁零である前秦の衛軍従事中郎・翟斌が河南で反乱を起こし、苻暉の守る洛陽を攻めようとしました。そこで苻暉は毛当に兵を与えて翟斌討伐を命じましたが、毛当は慕容鳳率いる丁零軍に大敗を喫し、戦死してしまいました。その功績を称えられ、武侯と諡されました。

毛当は石越と並び称される前秦の驍将であり、苻堅は彼らに二人の子（苻丕・苻暉）の補佐を委ねていました。相次ぐ彼らの戦死は前秦の民に大きな衝撃を与え、各地で盗賊が蜂起するようになったと言われています。

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