苻丕

苻丕(ふ ひ)



苻丕(350年 - 386年)は、五胡十六国時代前秦第4代皇帝。第3代皇帝苻堅の庶長子として、激動の時代を生きました。本貫は略陽郡臨渭県(現在の甘粛省天水市秦安県東南)。

生涯



苻堅の時代



苻丕は苻堅の庶長子として生まれましたが、母親が正室でなかったため、世子には立てられませんでした。357年苻堅が大秦天王に即位すると、長楽公に封じられました。異母弟の苻宏が天王太子に立てられます。

368年、苻丕は雍州刺史に任じられ、地方の統治を担います。371年、再び雍州刺史に任じられ、併せて使持節・征東大将軍を与えられます。その後、尚書令に任じられ、中央に復帰しました。

襄陽攻略



378年、苻丕は征南大将軍に任じられ、東晋領の襄陽征伐に向かいます。総勢10万を超える大軍を率い、襄陽を包囲します。東晋の将軍朱序は善戦しますが、苻丕は巧みな戦略と兵站により、襄陽を攻略することに成功しました。しかし、この攻略には8か月以上の歳月を要し、苻堅から叱責を受ける場面もありました。

への赴任と慕容垂の離反



380年、苻丕は都督関東諸軍事・征東大将軍・冀州牧に任じられ、に出鎮して関東を統治するよう命じられます。

383年苻堅淝水の戦いで大敗を喫すると、前秦に服属していた諸部族が次々と離反。慕容垂もその一人でした。苻丕は慕容垂の離反を疑いながらも、その勢力を利用しようとしますが、慕容垂は隙を見て自立。後燕を建国し、苻丕にとって最大の脅威となります。

慕容垂を攻略目標に定め、大軍を率いて進撃。苻丕は石越に兵を与えて慕容農討伐を命じますが、石越は戦死。これにより、民衆は衝撃を受け、盗賊があちこちで群起するようになります。

慕容垂への詰問との固守



苻丕は姜譲を慕容垂の下へ派遣し、その不忠な振る舞いを責め帰順を説きますが、慕容垂は拒否。ここに両者の決裂は決定的となります。

慕容垂の軍勢がに到達すると、苻丕は城を固守。慕容垂丁零や烏桓の兵を動員して攻勢を強めますが、苻丕はこれをしのぎます。しかし、食糧が尽き始めると、苻丕は丁零翟斌と連携を試みますが、失敗。東晋に救援を要請するという苦肉の策に出ます。

東晋への救援要請と劉牢之の到来



苻丕は謝玄に援軍を要請し、劉牢之率いる東晋軍がに到着します。しかし、劉牢之は慕容垂に敗れ、撤退。苻丕は再び孤立無援となります。

晋陽への逃避と皇帝即位



385年、飢餓に耐えかねた苻丕は、遂に衆を率いてを離れ、兵糧を確保するために枋頭へ入ります。その後、晋陽へ逃れ、王永らの勧めにより皇帝に即位しました。

皇帝時代と最期



皇帝となった苻丕は、苻堅を追諡し、百官を配置。領内に大赦を下しますが、その支配領域は徐々に縮小していきます。

386年、苻丕は東晋の揚威将軍馮該に敗れて殺害されました。苻丕の息子たちは捕らえられましたが、処刑はされず、苻宏の幕僚となりました。

後を継いだ苻登は苻丕を哀平皇帝と諡しました。

人物



苻丕は幼い頃から聡明で学問を好み、経史に広く通じていました。苻堅と軍略について語ると、苻堅はその見識を大いに称賛したと伝えられています。文武に優れた才能を持ち、将軍としても士卒を良く慰撫したため、人望を集めていました。

宗室



兄弟
苻暉(平原公)
苻宏(皇太子)
苻熙(広平公)
苻叡(鉅鹿公、雍州刺史
苻琳(河間公)
苻詵(中山公)
順陽公主
楊定の妻
苻宝(女)
苻錦(女)

苻寧
苻寿
苻鏘
苻懿
* 苻昶

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