苻敞

苻敞（ふ しょう、生没年不詳）は、五胡十六国時代の前秦に生きた皇族であり、第5代皇帝となる苻登（ふ とう）の父にあたる人物です。初代皇帝・苻健（ふ けん）の族子という関係にありました。

生涯

苻敞の詳しい事績については、残念ながら多くは明らかになっていません。しかし、苻健の治世下において、太尉司馬（たいいしば）、隴東郡太守（ろうとうぐんたいしゅ）、建節将軍（けんせつしょうぐん）といった要職を歴任し、その功績から潁川王（えいせんおう）に封じられたことが記録されています。

355年6月、苻健が崩御すると、その跡を継いで子の苻生（ふせい）が皇帝となりました。しかし、苻生は極めて残忍かつ暴虐な性格の持ち主であり、政治を顧みず酒色に溺れ、官吏や女官などを理由なく殺戮するといった非道な行為を繰り返しました。その結果、苻敞もまた苻生によって殺害されるという悲劇に見舞われたと伝えられています。詳しい経緯は不明です。

357年6月、苻堅（ふ けん）が天王位に就くと、苻敞の冤罪は晴らされ、その名誉は回復されました。右将軍（うしょうぐん）・涼州刺史（りょうしゅうしし）の官位が追贈され、その功績が称えられました。また、長男である苻同成（ふ どうせい）が家督を継ぐことを許されました。

その後、苻堅、そしてその後を継いだ苻丕（ふ ひ）が相次いで殺害されるという事態が発生し、前秦の国力は大きく衰退しました。このような混乱の中、苻登は群臣によって皇帝に擁立され、苻敞の血筋が再び前秦の中心に立つこととなったのです。

子女

苻同成（ふ どうせい）：潁川王に封じられ、司徒（しと）・太尉（たいい）を歴任しました。
苻登（ふ とう）：前秦の第5代皇帝となりました。
苻広（ふ こう）：安成王（あんせいおう）に封じられ、中書監（ちゅうしょかん）・司徒（しと）を歴任しましたが、後に南燕（なんえん）へ亡命しました。
苻王后（ふ おうこう）：東平公主（とうへいこうしゅ）に封じられ、隴西鮮卑（ろうせいせんぴ）である西秦（せいきん）の乞伏乾帰（きっぷくけんき）に嫁ぎ、その王后となりました。

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