范長生

范長生（はん ちょうせい）

范長生（生年不詳 - 318年）は、中国の五胡十六国時代に存在した成漢の宰相であり、天師道の教祖としても知られています。范延久、范九重、范支といった別名も持ち、字は元寿と称しました。彼は『蜀の八仙』の一人にも数えられています。

生涯

范長生は山奥に住み、悟りを求めて修行に励み、精神を養っていました。天師道の教祖としての名声は非常に高く、徳を備えた人物として知られていました。その学識は博く、多岐にわたる才能を持ち、特に天文の知識に精通し、策略にも長けていました。

百歳を超える高齢でありながら、蜀の人々から神のように敬われ、重んじられていました。

永康元年（300年）頃、巴氐族の李特・李流兄弟が、略陽・天水を中心とする六郡の流民を率いて益州に移住しました。しかし、益州刺史の羅尚との対立から、彼らは挙兵するに至ります。当時、范長生は千家余りの人々を率いて青城山に拠点を構えていました。羅尚の参軍であった徐轝は、范長生を汶山郡太守に任じ、彼と連携して李流を討伐するように羅尚に進言しましたが、受け入れられませんでした。このことを恨んだ徐轝は李流に降伏し、青城山に赴いて范長生に李流への協力を求めました。范長生はこれを受け入れ、李流軍に軍糧を供給しました。これにより、兵糧不足に苦しんでいた李流軍は息を吹き返すことができました。

建興元年（304年）、李流の後を継いだ李雄は成都を攻略すると、范長生が当地で非常に高い名望を得ていることを知り、彼に統治を任せて臣従しようとしました。しかし、范長生はこれを固辞しました。

建興3年（306年）3月、范長生は青城山から質素な輿に乗って成都に到着し、李雄の傘下に入りました。李雄は城門まで出迎えて歓迎し、彼の為に席を設けて丞相に任じ、范賢と呼び敬いました。

同年6月、范長生は李雄に尊号（皇帝の位）を称するよう勧め、李雄はこれを受け入れて皇帝に即位しました。

范長生は天地太師の称号を与えられ、西山侯に封じられました。また、彼の私兵は税が免除され、軍事的な徴用も免除されました。

玉衡8年（318年）4月、范長生は亡くなりました。李雄は彼の息子である侍中の范賁を丞相に抜擢しました。

『芸文伐山』という書物には、范長生がかつて劉備に仕えていたという記述があります。もしこれが事実であれば、李特の時代まで実に130年以上が経過していることになります。

南宋の祝穆が著した『方輿勝覧』によると、かつて蜀漢の劉備は范長生を征伐しようとしましたが失敗し、その後彼を逍遥公に封じたとされています。劉禅が後を継ぐと、彼の邸宅は長生観と名付けられたと伝えられています。

子

范賁 - 成漢の丞相。東晋の桓温によって成漢が滅ぼされると、鄧定・隗文らに擁立されて皇帝に立てられましたが、益州刺史の周撫によって討伐されました。

参考文献

『晋書』載記第20・21
『資治通鑑』巻084-090
『十六国春秋』巻80

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