范賁

范賁（はん ほん）：成漢の宰相から短命な皇帝へ

范賁は、五胡十六国時代の成漢において、その生涯を波乱に満ちたものとして終えました。彼の出自、宰相としての活動、そして皇帝を僭称しての蜂起と最期について詳しく解説します。

生い立ちと成漢への仕官

范賁は、天師道の教祖である范長生を父として生まれました。范長生は、千家余りの信徒を率いて青城山を拠点としていましたが、益州が混乱に陥ると、巴氐族の李雄を支援しました。李雄が後に成漢を建国すると、范長生はその功績から重用され、丞相に任じられます。范賁もまた、父に従って成漢に仕え、侍中という役職に就きました。

318年、父である范長生の死後、范賁は李雄によって丞相に抜擢されます。これは、彼の家柄と、父が成漢建国に果たした貢献が大きく影響していると考えられます。

成漢の滅亡と范賁の蜂起

347年、東晋の大司馬である桓温の侵攻により、成漢は滅亡します。この混乱に乗じて、尚書僕射の王誓、鎮西将軍の鄧定、平南将軍の王潤、将軍の隗文、蕭恭文らは桓温に反旗を翻し、それぞれ1万を超える兵を率いて挙兵しました。桓温は自ら鄧定を破り、袁喬を派遣して隗文らを打ち破り、益州刺史の周撫を彭模に派遣して王誓と王潤を討ち取ります。

桓温が江陵へ帰還すると、鄧定と隗文は再び決起し、成都に侵入します。東晋の征虜将軍である楊謙は涪城を放棄して徳陽へ撤退しました。この機に乗じ、鄧定と隗文は范賁を皇帝として擁立します。范賁の父である范長生が李雄から厚い信任を得ていたことから、蜀の人々は范賁の即位を喜びました。范賁は、この人気を利用して妖異な術で民衆を惑わせたため、兵は数千人にまで膨れ上がり、蜀の人々はこぞって范賁に帰順しました。

皇帝としての短い治世と最期

349年4月、東晋の益州刺史である周撫は、龍驤将軍の朱寿と共に范賁を攻撃しました。范賁はこれに敗北し、首を斬られました。これにより、益州は遂に平定されることとなりました。范賁が皇帝を名乗った期間は極めて短く、彼の反乱は東晋によって迅速に鎮圧されました。

范賁の生涯は、五胡十六国時代の混乱を象徴する出来事の一つと言えるでしょう。彼の出自、政治的な状況、そして彼自身の決断が複雑に絡み合い、短命な皇帝としての彼の運命を決定づけました。

参考文献

『晋書』載記第20・21
『資治通鑑』巻097-098
* 『十六国春秋』巻80

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