茨城県立水海道第一高等学校・附属中学校

茨城県常総市に位置する茨城県立水海道第一高等学校・附属中学校は、1900年に創立された歴史ある公立の中高一貫教育校です。地元では「水海道一高」や「一高」といった通称で親しまれています。鬼怒川のほとり、筑波山を望む自然豊かな亀岡台地に学舎を構え、これまでに2万人を超える卒業生を社会に送り出してきました。本校は全日制普通科（単位制）を主としており、附属中学校は2022年に開校しました。

教育方針と校風

本校の教育は、1917年に制定された「至誠・剛健・快活」の校訓を指針としています。また、「済美（せいび）」という言葉が校風を表す上で重要なキーワードとなっています。この「済美」は、『春秋左氏伝』にある故事「世々其の美を済（な）し、其の名を隕（おと）さず」に由来し、代々その美徳を受け継ぎ、名声を損なわないという意味が込められています。卒業生の同窓会は「済美同窓会」と称され、生徒会誌や図書室にもその名が冠されるなど、学校全体の精神として受け継がれています。

教育課程と進路

全日制課程は単位制を採用しており、生徒の多様な興味・関心や進路希望に応じた学習計画を立てることが可能です。生徒のほとんどが進学を希望しており、四年制大学をはじめ、短期大学や専門学校へと進路を決めています。学区の制限はありませんが、多くの生徒が常総市内を中心に、下妻市、取手市西部、つくば市西部、坂東市といった近隣地域から通学しています。

沿革

本校の歴史は、1900年に茨城縣下妻中學校の分校として水海道町に開校したことから始まります。1902年には茨城県立水海道中学校として独立し、1948年の学制改革を経て茨城県立水海道高等学校、翌年には茨城県立水海道第一高等学校となりました。この間、定時制普通科も設置されていましたが、2015年に廃止されています。2004年度からは全日制課程が進学重視型の単位制に移行し、文部科学省の「学力向上フロンティアハイスクール」や茨城県の「大学進学ジャンプアップスクール」に指定されるなど、学力向上にも注力してきました。2006年には同窓会によって「山口奨学基金」が創設され、生徒の学びを支援しています。2012年には新しい本館が完成し、施設面の充実も図られています。そして、2022年には附属中学校が開校し、中高一貫教育がスタートしました。

学校の象徴

本校の校章は、1948年に制定されたものです。バラ科の植物である海棠の葉をモチーフにした3枚の葉で「水海道」を表し、旧制中学校の伝統を引き継ぐ勾玉を組み合わせて全体で「水」の字を形作り、中央に「高」の文字を配しています。旧制水海道中学校時代の校章は、勾玉と管玉で「水」「中」を表したデザインでした。
校歌は創立10周年にあたる1910年に制定されました。作詞は吉丸一昌氏、作曲は南能衛氏によるものです。筑波山や鬼怒川といった地域の自然景観が歌詞に織り込まれており、また、かつてこの地で力を持った人々を念頭に、意欲や結束を促す内容が歌われています。一番のみの構成で、学校名や所在地名が登場しない点が特徴的です。
スクールカラーはコバルトブルーです。青空に映える色として選ばれました。

主な学校行事

定期戦（5月上旬）: 兄弟校である下妻第一高等学校との間で、運動部の対抗戦が行われます。地元では「常総野の早慶戦」と称される伝統行事で、毎年交互に会場校となり、全校生徒が参加します。関東鉄道常総線を利用して移動するため、当日は車両が増結されます。駅や会場までの移動時には、両校の応援団、吹奏楽部、チアリーダーによる応援合戦や「花魁道中」が行われるなど、熱気に包まれます。
亀陵祭（6月上旬）: 学校所在地の亀岡に由来する名称の文化祭です。校内発表の1日目と、一般公開される2日目に分かれて開催され、クラス企画や部活動、有志団体の発表などが行われます。
文化講演会・芸術鑑賞会（秋）: 生徒の視野を広げる機会として開催されます。文化講演会には開高健氏やピーター・フランクル氏などが招かれた実績があり、芸術鑑賞会では演劇や狂言などが鑑賞されます。文化講演会は3年に一度実施されます。
修学旅行（10月上～中旬）: 2年次で実施されます。2006年度以降は海外への研修旅行も行われています。
クラスマッチ（10月中旬）: 学年ごとに球技などを通してクラス間の交流と親睦を深めます。
踏破会（11月）: かつて小貝川沿いを長距離歩く行事でしたが、附属中学校の開校に伴い名称と距離が変更されました。高校生男子16km、女子12kmの距離を歩きます。
* 海外語学研修（2月下旬～3月上旬）: 2017年度から開始された希望者向けのプログラムで、フィリピンのセブ島にて集中的に英語を学ぶ機会を提供しています。

部活動

本校は「文武両道」を奨励しており、全校生徒のおよそ8割が運動部または文化部に所属しています。運動部では、創部1900年の歴史を持つ野球部が過去に甲子園予選の決勝に進出した実績があります。文化部では、吹奏楽部が東関東吹奏楽コンクールに複数回出場し銀賞を受賞、演劇部は県内有数の強豪として関東大会やサマフェスに出場するなど高いレベルで活動しています。また、弁論部も全国大会での優勝経験があります。応援団は2018年度から部活動として活動しています。

主な施設

学校敷地内には、2012年に完成した新本館をはじめ、複層式の体育館、特別教室棟、済美会館（同窓会館）、亀陵会館（セミナー・合宿施設）、弓道場、グラウンドなど、充実した教育環境を支える施設が整っています。特に亀陵会館は、かつて存在した建築家・駒杵勤治設計の旧講堂の外観を模して建てられており、学校の歴史を今に伝える存在となっています。

その他

学校が立地する常総市ではフィルムコミッションによる映画・ドラマ撮影の誘致が積極的に行われており、本校もロケ地として利用されることがあります。過去には映画「ピンポン」の撮影に旧本館屋上などが使用されました。交通アクセスは、関東鉄道常総線水海道駅から徒歩約5分と良好で、路線バスやスクールバスも運行されています。

本校の同窓会である済美同窓会は、卒業生の交流促進や学校への支援活動を行っています。また、多くの分野で活躍する卒業生を輩出しており、政治家、官僚、学者、芸術家、スポーツ関係者など、各界でリーダーシップを発揮しています。著名な出身者には、風見章（政治家）、登坂重次郎（官僚・政治家）、山口武平（地方政治家）、松本作衛（官僚）、多田富雄（免疫学者 ※元生徒）、小西良太郎（音楽プロデューサー）、菱川勢一（クリエイティブディレクター）などがいます。

茨城県立水海道第一高等学校・附属中学校は、長い歴史と伝統を受け継ぎながら、時代の変化に対応し、地域社会に貢献する人材の育成を目指しています。

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