草薙神社

草薙神社の概要

草薙神社は、静岡県静岡市清水区草薙に位置する神社です。古くからこの地に鎮座し、式内社としてその名を連ねています。旧社格は県社であり、地域の人々から深く信仰されています。

祭神

祭神は、日本武尊（やまとたけるのみこと）です。日本武尊は、『古事記』や『日本書紀』に登場する英雄で、東征の際に野火から逃れるため、天叢雲剣で草を薙ぎ払ったという伝説が残っています。このことから、天叢雲剣は「草薙剣」と呼ばれるようになりました。

草薙神社の北東には、同じく「クサナギ」を称する久佐奈岐神社があり、両社とも日本武尊の火難伝説に関係があるとされています。一説には、火難伝承の地は草薙神社のある場所だと伝えられています。

歴史

創建

社伝によると、景行天皇53年に天皇が日本武尊ゆかりの地を巡幸した際、9月20日にこの地を訪れ、日本武尊の霊を祀ったことが創建とされています。また、天皇は神体として草薙剣を奉納したと伝えられています。しかし、草薙剣は後に熱田神宮に移されたとされています。

また、草薙神社は古くは清水区草薙1丁目の「天皇原」と呼ばれる場所に鎮座していたと伝えられています。現在の場所への遷座時期は明確ではありませんが、一説には天正18年（1590年）の造営時とされています。

歴史考証の上では、草薙神社の創建は日本武尊の伝説と深く関連していると考えられています。静岡市周辺には大規模な古墳が残っており、これらの古墳を築いた勢力の服属が、伝説成立の背景にあると推測されています。

当地の首長古墳は時代とともに変遷しており、「清水区庵原や谷津山丘陵（前期：4世紀代）→瀬名丘陵（中期：5世紀代）→有度山北麓（後期：6世紀代）」と推測されています。このうち、清水区庵原付近には久佐奈岐神社が、有度山北麓には草薙神社が鎮座しています。

「クサナギ」という地名は、焼畑に由来するという説もあります。日本武尊が向かい火をつけて野火を食い止めたという伝説も、野焼きの延焼防止として知られる手法であり、焼畑系の地名が先行し、その後に日本武尊の火難伝説が成立した可能性も指摘されています。日本武尊の伝説が成立する以前は、草薙神社は山の神、または谷部にあることから水の神として信仰されていたと考えられています。

概史

延長5年（927年）に成立した『延喜式』神名帳には、駿河国有度郡に「草薙神社」と記載され、式内社に列しています。日本武尊の伝承との関連から、武家からの信仰も集め、平将門の乱の平定にも奉賽が行われたと伝えられています。

中世には、足利義教が駿河に下向した際に、尭孝が草薙社について記述しています。天正8年（1580年）には、森民部太夫により釣燈籠と鰐口が奉納されました。これらの奉納物は、現在では静岡市指定文化財となっています。江戸時代には、50石の朱印地が与えられていました。

明治維新後、明治3年（1873年）に郷社に列し、明治12年（1879年）には県社に昇格しました。

神階

『駿河国神名帳』では、「草奈岐天神」として正五位下に列せられています。

境内

境内は、有度山北麓の谷部に位置し、広さは約0.7ヘクタールです。境内には、樹齢1000年以上とされる巨大なクスノキが立っており、静岡市指定天然記念物となっています。

草薙駅付近の平地は「天皇原」と呼ばれており、かつて草薙神社はこの地に鎮座していたとされています。現在、この地は「古宮」として伝えられています。

大鳥居

かつて草薙駅そばの市道には、コンクリート製の「一の鳥居」が建っていましたが、2020年に撤去されました。この鳥居は1975年に県の事業によって再建されたものですが、所有者が不明であったため、老朽化による倒壊の危険性が指摘され、市が撤去を決定しました。

摂末社

境内には、本殿の南側に9社、北側に9社の摂末社が鎮座しています。

祭事

例祭は9月20日に行われます。この日は、景行天皇による神社創建日とされています。例祭では、「龍勢（流星）煙火」と呼ばれる花火が打ち上げられます。この花火は安政年間から続くもので、静岡県指定無形民俗文化財に指定されています。

文化財

静岡県指定無形民俗文化財

草薙神社龍勢花火

静岡市指定文化財

釣燈籠（工芸品）
鰐口（工芸品）
大樟（天然記念物）

現地情報

所在地：静岡県静岡市清水区草薙349
交通アクセス：JR東海道本線 草薙駅からバスで「草薙神社前」下車すぐ
* 周辺：瓢箪塚古墳


草薙神社は、歴史と文化が息づく場所として、地元の人々に大切にされています。訪れる際には、ぜひ境内のクスノキや、例祭の龍勢花火も楽しんでみてください。

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