草間偉

草間偉（くさま いさむ）

生涯

草間偉は、1881年（明治14年）6月1日に長野県で生まれ、1972年（昭和47年）5月12日に生涯を閉じました。明治時代後期から昭和時代にかけて、土木工学者として日本の発展に貢献しました。

学歴と職歴

旧制第一高等学校を経て、1906年（明治39年）に東京帝国大学工科大学土木工学科を卒業しました。卒業後は九州鉄道に入社し、別府線の建設に携わりました。その後、鉄道院に転じ、日豊線の建設を担当しました。

1909年（明治42年）には、母校である東京帝国大学工科大学の助教授に就任し、教育者としてのキャリアをスタートさせました。1918年（大正7年）からは2年間、衛生工学の研究のため欧米へ留学し、イリノイ大学、コーネル大学、ハーバード大学などで微生物学や水理学などを学びました。帰国後の1921年（大正10年）には、中島鋭治教授の逝去に伴い、後任として教授に昇進し、土木工学講座を担当しました。

1942年（昭和17年）に東京帝国大学を退官（名誉教授）した後も、早稲田大学教授として教鞭を執り続けました。1943年（昭和18年）の早稲田大学理工学部土木工学科創設時には、初代学科主任に就任し、学科の基礎を築きました。また、高岡市、前橋市、名古屋市、福井市、南満州鉄道など、多くの都市や組織で上下水道顧問を務め、日本のインフラ整備に貢献しました。

主な業績

草間偉の業績の中で特筆すべきは、1923年（大正12年）の関東大震災の情報をいち早く欧米に伝えた、福島県相馬郡原町の無線塔の設計です。この無線塔は、当時としては画期的な技術が用いられており、草間の設計能力の高さを証明するものとなりました。

家族

草間偉は、松本銀行取締役頭取で松本商業会議所設立の発起人でもあった草間代次郎を父に持ちます。兄に病理細菌学者の草間滋がいます。妻は、裁判所検事・一色信太郞の妹である鏡、後妻に子爵黒田和志の三女・篤を迎えています。多くの子どもたちに恵まれ、長男の毅一は軍人、次男の卓次は医師、長女の美恵子は文部省社会教育官の不破祐俊の妻、次女の徳子は直腸肛門外科医・小平正の妻、三男の章は中村太八郎の養子、三女の和子は旧制中学教師の黒川晴次郎の妻、四男の隆は草間医院院長、五男の黒川達也は立川病院院長として、それぞれの分野で活躍しました。また、妻のイチは、熊本市尚絅女学校出身で、佐賀県士族・原口宣献の五女です。甥には秦藤樹、草間昌三などがいます。

受賞歴

1926年（大正15年）には土木学会賞、1967年（昭和42年）には土木学会功績賞を受賞し、その功績が広く認められました。

墓所

草間偉は、東京都豊島区にある雑司ヶ谷霊園に眠っています。

参考文献

* 高橋裕、藤井肇男 共著『近代日本土木人物事典: 国土を築いた人々』鹿島出版会、2013年。ISBN 4306094294。

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