草間直方

草間直方（1753年 - 1831年）は、江戸時代後期に活躍した思想家であり、同時に両替商としても手腕を振るった人物です。彼の名は、詳細な貨幣史である『三貨図彙』の著者として、歴史に刻まれています。

直方は京都の商人の子として生まれ、10歳で鴻池家の京都両替店に丁稚奉公に入りました。その後、河内国の鴻池新田会所への転勤を経て、草間家の婿養子となり、鴻池本家で35年間勤務。その間、支配人見習い、そして支配人として、鴻池家の事業を支えました。文化5年（1808年）に独立を許されると、今橋に店を構え、熊本藩や盛岡藩など、諸藩の御用商人として活躍し、経済顧問としての役割も果たしました。

商人として活動する傍ら、直方は懐徳堂で学問を修めました。中井竹山、中井履軒に師事し、同門の山片蟠桃とは異なる道を歩みます。蟠桃が哲学的な著述に傾倒したのに対し、直方は経済論の分野でその才能を開花させました。

直方の名声を決定づけたのは、文化12年（1815年）に完成した『三貨図彙』です。20年の歳月を費やして著されたこの書は、古代から江戸時代に至る貨幣、物価、金融、貿易に関する膨大な情報を網羅した史書であり、経済の動向を冷静かつ合理的に分析する視点、そして、江戸幕府の物価政策への批判や、消費活動を肯定する姿勢は、当時の経済思想としては非常に先進的であり、近代合理主義を先取りするものとして評価されています。

また、文政年間には幕府旗本の近藤重蔵と親交を結ぶなど、幅広い人脈を築きました。その功績が認められ、大正13年（1924年）には従五位が追贈されています。

主な著作としては、

『三貨図彙』：日本の貨幣史を詳細に解説した名著。
『草間伊助筆記』
『鴻池新田開発事略』
『茶器名物図彙』

などが挙げられます。

草間直方は、単なる商人ではなく、思想家、経済学者としての顔も持ち合わせていました。彼の経済に対する深い洞察力と合理的な考え方は、現代においても学ぶべき点が多く、その業績は色褪せることなく、後世に語り継がれています。

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