荒川秀之助

荒川秀之助：競輪界に革命を起こした「飛燕の飛びつき」

荒川秀之助（あらかわ しゅうのすけ、1948年11月4日 - ）は、宮城県名取市出身の元競輪選手です。日本競輪選手会・宮城支部に所属し、25期生として活躍しました。東北高等学校を経て日本競輪学校に入学。同期には、谷津田陽一、オリンピック選手の山藤浩三、伊藤富士夫らがいます。また、実弟の荒川玄太も元競輪選手です。

1967年9月17日にいわき平競輪場でデビューし、翌日には初勝利を挙げました。1970年、荒川は競輪界の勢力図を塗り替える存在となります。当時、高原永伍、伊藤繁、吉川多喜夫らが中心だった「神奈川王国」が衰退し、「群馬王国」が台頭する中、「宮城王国」の礎を築いたのが荒川でした。

「飛燕の飛びつき」誕生

1970年11月6日、岸和田競輪場で開催された日本選手権競輪決勝で、荒川は最終コーナー付近で、インコースから逃げる福島正幸の番手を奪い、そのまま優勝しました。当時21歳。このレースには高原永伍、石田雄彦といった大物選手も出場していましたが、彼らはこのレースを最後にGI決勝から姿を消すことになりました。荒川は、続く競輪祭新人王戦でも優勝し、宮城勢が上位を独占しました。

荒川の斬新な戦法は「飛燕の飛びつき」と呼ばれ、瞬く間に注目を集めました。これは、小柄な体格を補うための苦肉の策として編み出されたもので、先行選手の番手を奪い、そこから抜け出すという、従来の競輪のセオリーを覆すものでした。この戦法は、それまでの単調なレース展開に変化をもたらし、イン待ちやイン斬りといった戦法が生まれるきっかけとなりました。

中野浩一との全勝対決

「飛燕の飛びつき」で一躍トップスターとなった荒川ですが、その後はマークが厳しくなり、なかなか飛びつきを成功させることができなくなりました。また、競輪界は若手選手がスピードを武器にする時代へと突入し、荒川の戦法は時代遅れとさえ思われるようになりました。

しかし、1979年の高松宮杯で荒川は再び輝きを放ちます。予選から全て1着で勝ち上がり、決勝では、同じく全勝で勝ち上がってきた中野浩一と対決することになりました。当時、中野が圧倒的な人気を誇る中で、荒川は冷静にレースを展開し、見事優勝を飾りました。この勝利は、荒川の戦法がまだ通用することを証明し、再び注目を集めるきっかけとなりました。

この時、荒川は競輪評論家の木庭賢也から長澤義明が制作した特注の自転車フレームを譲り受け、レースに臨んでいたそうです。この優勝を機に、荒川の得意としたイン待ち、イン斬りの戦法は競輪に欠かせないものとして復活しました。

2002年7月まで現役を続けた荒川は、通算622勝を挙げ、競輪界にその名を刻みました。彼の革新的な戦法は、現代競輪にも大きな影響を与えています。

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