荻江節

荻江節（おぎえ-ぶし）について

荻江節は、長唄を起源として発展してきた三味線音楽の一形式であり、現在では「古曲」とされる一中節、河東節、宮薗節と共に名高い産物です。1993年4月15日には国の重要無形文化財にも指定された荻江節は、今も「荻江節保存会」を中心に其の伝承と普及活動が行われています。

歴史的背景

荻江節の創始者とされる初代荻江露友（本名・千葉新七）は、弘前藩に仕えた武士の家系に生まれました。彼は、長唄の唄方である初代松島庄五郎のもとで修行し、1766年ごろから江戸市村座で立唄として活動を始めました。特に、中村座の冨士田吉次と共に名人として知られるようになり、1775年に舞台を退いてからは、吉原を中心にした座敷芸に特化して演じるようになります。これにより、荻江節は次第に独自のスタイルへと進化し、他の長唄から他に類を見ない芸風を確立しました。

その後、安永年間には二世露友が初代の教えを受け継ぎましたが、その後の芸の系譜は途絶えがちでありました。しかしながら、幕末に入ると、吉原の玉屋山三郎などの努力によって再び荻江節は息を吹き返し、明治の時代において深川の材木問屋近江屋喜左衛門が四世露友を継承し、長唄の影響から脱して新しい発展を遂げます。彼は、上方地唄の要素を取り入れ、荻江節の独特な芸風を一層確立しました。その後も、彼の死後、弟子たちがその伝承を支えており、現在は荻江寿友が家元としてその名跡を引き継いでいます。

芸風の特性

荻江節は、伝統的な長唄に基づく歌主体の音楽で、その歌の要素が三味線の演奏をリードします。また、荻江節の芸風は、長唄に比べて控えめであり、内面的な情緒を反映した渋い表現が特徴として挙げられます。長唄とは異なり、囃子（はやし）を使用しない点も、荻江節が持つ独自性のひとつです。代表的な曲目には「八島」「鐘の岬」「深川八景」などがあり、これらの曲は四世露友の影響を受けて新たに創作されたものや地唄から移入されたものです。

現状と活動

荻江節は、長きにわたり吉原において座敷芸として発展してきたため、現在では一般的な機会では演奏されることが少ないです。専門の古曲鑑賞会や日本舞踊の地方での演奏が中心であり、新たなファン層の拡大には限界があります。また、昭和40年代までは富裕層によって稽古されていたものの、現代では競合する演奏家が多いこともあり、一般的な習い事としてはほとんど成り立っていません。

重要無形文化財としての位置づけ

荻江節が重要無形文化財に指定されるための条件としては、「荻江節保存会の会員が立唄および立三味線を演奏すること」が求められます。

現在の保持者と活動

荻江節の保持者には、原田綾子（荻江あや）、小林峯子（荻江せつ）、佐藤知香子（荻江ちか）、など7名が名を連ねており、荻江節保存会がその活動の中心となっています。住所は東京都中央区銀座に位置し、今後も目に見えないところでこの伝統を支え、伝えていく役目を果たしていくことでしょう。

荻江節はその独特な芸風と歴史を持ちながら、重要無形文化財としての価値を持つ伝統音楽であり、今もその魅力を多くの人々に伝え続けています。音楽の美しさと深さを感じる荻江節は、今後も忘れられることなく、次世代へと受け継がれていくことでしょう。

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