萩原家

萩原家：公家から華族へ、栄華と変遷の物語

萩原家（はぎわらけ）は、歴史の舞台裏で華麗な役割を演じた家系です。そのルーツは卜部氏吉田家の庶流に遡り、公家として、そして華族制度成立後は子爵家として、日本の歴史に名を刻みました。本稿では、萩原家の歴史、家格、系譜、そして明治維新前後における変遷を詳細に解説します。

封建時代の萩原家：神祇職と豊国神社

萩原家の創始は慶長年間。吉田兼治の長男であり、祖父兼見の養子となった萩原兼従を家祖として、その歴史が始まりました。当初は半家、内々の家格でしたが、神祇職を家業としていました。近衛家の家札を持ち、初期の家禄は359石2斗とされていました。しかし、後に豊後国速水郡朝見荘に1000石の所領を得ることとなります。

この、半家でありながら摂家並みの家禄を有していた理由には、二つの大きな要因が考えられます。一つ目は、萩原員従とその実父である富小路頼直が後水尾天皇と後西天皇の寵臣であったこと。萩原家は「堂上家・富小路家の分家」という形で創設されたため、萩原兼従自身は員従以降の当主よりも身分が低いとされています。二つ目は、豊国神社の社務を世襲する社家として豊臣秀吉の推挙を受けたという事実です。大坂の陣後、豊国神社は徳川幕府によって破却されましたが、社家としての役料は萩原家の家領として認められ続けました。

員従は養子を迎えた後、実子である従久をもうけました。従久は後西天皇の稚児として近侍し、宝永8年には分家の堂上家である錦織家を創設する許可を得ます。同じ年に、員従の養子で萩原家を継いだ萩原兼武は、本姓を藤原氏から卜部氏に変更しました。幕末に至るまで、萩原家の所領は1000石を維持していました。

明治維新と華族制度：子爵家の誕生

9代当主員光の代に明治維新を迎えます。明治2年（1869年）6月17日の行政官達により、公家と大名家が統合され華族制度が誕生。萩原家も公家として華族に列せられました。明治3年に定められた家禄は現米で483石6斗、明治9年の金禄公債証書発行条例に基づく金禄公債の額は2万1177円26銭5厘でした（華族受給者中217位）。

明治前期、員光の住居は東京府牛込区市ヶ谷仲ノ町にありました。家扶は岡本保実でした。明治17年（1884年）7月7日の華族令施行により華族の五爵制が導入されると、同8日、大納言直任の例がない旧堂上家であった員光は子爵に叙せられました。

明治35年に員光が死去すると、長男の員種（10代）が爵位と家督を相続しました。員種の娘である順子は、京都大学教授の一瀬雷信に嫁ぎました。その後、大正5年に員種が死去すると、長男員振（11代）が爵位と家督を相続。昭和12年には員振が死去し、長男兼武（12代）が家督と爵位を相続しました。兼武の代には、子爵家の邸宅が京都府愛宕郡八瀬村にありました。

系譜と参考文献

（系譜図は本文中に記述できませんが、必要であれば別途作成可能です。）

本稿の作成にあたり、以下のような文献を参照しました。

浅見雅男『華族誕生 名誉と体面の明治』
石川健次郎「明治前期における華族の銀行投資―第15国立銀行の場合―」
刑部芳則『京都に残った公家たち: 華族の近代』
小田部雄次『華族：近代日本貴族の虚像と実像』
霞会館華族家系大成編輯委員会『昭和新修華族家系大成 別巻 華族制度資料集』
霞会館華族家系大成編輯委員会『平成新修旧華族家系大成 下巻』
華族大鑑刊行会『華族大鑑』
橋本政宣『公家事典』
近藤敏喬編『宮廷公家系図集覧』
『雲上明覧大全』

これらの文献から得られた情報を基に、萩原家の歴史を可能な限り正確に記述することを目指しました。しかし、歴史的事実の解釈には多様性があることをご承知おきください。

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