萬勝寺 (恵那市)

萬勝寺 (まんしょうじ)

萬勝寺は、岐阜県恵那市山岡町にある臨済宗妙心寺派の寺院で、山号を飯高山と称します。この寺は、厄除けの飯高観音として地域の人々に広く知られています。

歴史

萬勝寺の歴史は、平安時代初期に慈覚大師によって創建されたことに始まります。創建当初は天台宗の寺院で、飯高山満昌寺と称していました。最盛期には七堂伽藍を構え、山内には十二もの寺院が存在したと伝えられています。中世には385石もの寺領を有し、その繁栄ぶりは目覚ましいものでした。

建久6年(1195年)には、飯高寺で写経された古文孝経が、現在の愛知県豊田市の猿投神社に所蔵されています。この古文孝経の奥書には「美州遠山之庄飯高寺」と記されており、この飯高寺が現在の萬勝寺を指すと考えられています。

戦国時代末期、明知遠山氏の遠山利景は、出家して満昌寺の僧侶となりましたが、後に還俗し武将として徳川方に付き、武田勢と戦いました。天正2年(1574年)、武田勝頼による東濃侵攻の際、満昌寺は兵火によって焼失し、過去の記録の多くが失われてしまいました。

江戸時代に入り、旗本となった遠山利景は、寺の荒廃を嘆き、龍護寺の椽室宗採に再興を依頼しました。地元有力者の協力を得て、元和2年(1616年)に、厄除けの千手観音菩薩はそのままに、新たに十一面観音菩薩を本尊として、臨済宗の寺院として再興され、寺名も妙法山 萬勝寺と改められました。しかし、当時は檀家が少なく、寺格も低い状態でした。

文政年間(1818年～1831年)には、烏道就和尚の代に法地へと格上げされ、文政12年(1829年)には、宗活首座の代に梵鐘が鋳造されました。また、萬勝寺のある飯高の地は、岩村藩との間で領有争いがありましたが、最終的には尾張藩の領地となりました。

昭和16年（1941年）、失火により本堂などが焼失しましたが、本尊の十一面観音菩薩像は無事でした。戦後、檀信徒の尽力により本堂、観音堂、庫裏が再建されました。平成元年（1989年）には山門と鐘楼が再建され、平成4年（1992年）には本堂が再建されました。また、山号も妙法山から飯高山に改められました。平成13年（2001年）には、千手観音菩薩像を安置する新観音堂が落成しました。

萬勝寺は、恵那地方では厄除けの飯高観音として知られ、初詣や縁日には多くの参拝者が訪れています。

境内

萬勝寺の境内には、以下のような見どころがあります。

山門: 寺の入り口にそびえる山門は、平成元年に再建されました。
旧観音堂(弘法堂): 古くからある観音堂で、弘法大師ゆかりの場所とされています。
新観音堂: 平成13年に落成した新しい観音堂には、厄除けの千手観音菩薩像が安置されています。17年毎に御開帳が行われます。
鶴と亀の庭: 美しい庭園は、訪れる人の心を癒やします。
茶室 園月: 宝永年間に岩村藩主松平乗紀が建てたとされる茶室で、移築復元されました。藩校知新館を創立した文化人であった松平乗紀の文人趣味を今に伝える貴重な文化財です。


その他にも、境内には以下のような場所があります。

機子ヶ池(弁財天池): 悲しい伝説が残る池で、夜になると機を織る音が聞こえてきたという言い伝えがあります。
飯高経塚: 中世に造成されたと考えられる経塚で、過去には盗掘されたこともありました。
五輪塔: 中世の僧侶を葬ったと考えられる五輪塔が、境内に移されています。

文化財

萬勝寺の境内は、恵那市指定の名勝となっており、飯高観音としても知られています。また、周辺には爪切地蔵や盛久寺といった寺院があります。

関連寺院

萬勝寺の関連寺院としては、龍護寺があります。

参考文献

『山岡町史　通史編』
『旗本明知遠山氏 明知御陣屋 乾』
『恵那郡史』

外部リンク

飯高山　萬勝禅寺
飯高観音　恵那市観光協会
岐阜県恵那市地域情報サイト

脚注

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