遠山利景

遠山利景（とおやま としかげ）

遠山利景は、戦国時代から江戸時代にかけての武将で、美濃国明知城主、明知遠山氏の初代当主です。江戸幕府の旗本（交代寄合）として、その名を歴史に刻みました。

生い立ちと仏門での修行

遠山利景は、美濃国恵那郡明知に生まれました。父は遠山景行とされていますが、兄とされる遠山景玄の子であるという説もあります。母は三河広瀬城主・三宅高貞の娘です。また、妻は三河足助城主・鱸氏（鈴木重直）の娘で、その母は松平清康の養女であり、徳川家康の乳母である随念院（お久）です。

幼少の頃、利景は飯高山満昌寺に入り僧侶となりました。しかし、元亀元年（1570年）の上村合戦で父・景行が武田軍に敗れて自刃し、兄・景玄も戦死。さらに天正2年（1574年）には、もう一人の兄・友治も武田氏の侵攻で討ち死にし、明知城は落城しました。

還俗、武将としての台頭

兄・景玄の遺児がまだ幼かったため、家臣たちの協議により、利景は還俗して明知遠山氏を継ぐことになりました。名を利景と改め、通称を勘右衛門と称しました。その後、三河足助城主の鱸氏の娘を妻に迎え、嫡男・方景をもうけます。また、兄・景玄の遺児を養嗣子とし、上村合戦で当主が討ち死にした串原遠山氏の経景も養子としました。

天正3年（1575年）の長篠の戦い後、織田信忠が武田方の岩村城を攻めた際、利景は小里城を落とし、明知城を奪還。天正10年（1582年）の甲州征伐では、徳川家康の麾下に属し、一行と方景を伴って参加。本能寺の変後、駿河国で本多重次を訪ね、徳川方に従うことを誓いました。

激動の時代、そして旧領回復へ

しかし、羽柴秀吉の命により、森長可に従い人質を出すよう命じられたため、一行の娘を人質として金山城へ送ります。その後、天正11年（1583年）には密かに明知城を出て足助城へ移り、家康の麾下に入ります。これに激怒した森長可は、人質の娘を磔刑にするという悲劇が起こりました。その後、明知城は森長可の手に落ちます。

天正12年（1584年）、小牧・長久手の戦いが始まると、利景は策を講じて明知城を奪還。首級を挙げ、所領安堵が認められました。その後、森長可の家臣が守る岩村城への攻撃は失敗しましたが、真田昌幸を押し込めるための小諸城の守りに、一行が派遣されるなど、各地で転戦しました。

秀吉と織田信雄との和睦により、明知城は森長可の弟・森忠政の所領となり、利景は再び足助城へ退きます。天正13年（1585年）、家康は下条康長に上村を利景に引き渡すよう命じました。

天正18年（1590年）、北条氏直の小田原征伐に、家康軍の一員として嫡男・方景や串原遠山氏の経景とともに従軍。後北条氏滅亡後、家康が関東に移封されると、上総国で知行地を賜り、江戸にも屋敷を与えられました。

慶長元年（1596年）には、明知遠山氏の菩提寺として龍護寺を開基しました。

関ヶ原の戦いと旗本としての地位確立

慶長5年（1600年）関ヶ原の戦いが勃発すると、利景は徳川方として東軍に参加。旧領奪還のため、一族と共に明知城を包囲し奪還に成功。その後、岩村城を包囲し、戦後、旧領を回復し、江戸幕府成立後の慶長8年（1603年）には、美濃国恵那郡と土岐郡において6,530石の知行地を朱印状で認められ、交代寄合となりました。伏見にて従五位下、民部少輔に任じられ、家康が大坂城に入城した際には御奏者奉行を務めました。

江戸幕府成立後、利景は経景に領地を分け与え、旗本明知遠山氏の家老としました。経景の子孫は後に「永田」と改姓し、代々明知遠山氏を支えました。

慶長17年（1612年）には、観音寺を開基。慶長19年（1614年）に75歳で没し、自らが創建した龍護寺に葬られました。家督は嫡男・方景が継ぎました。

子孫

12代遠山景高は安芸守となり、ペリー来航時の浦賀奉行を務めました。また、曾孫からの分家筋からは、名奉行として知られる遠山景元が出ていますが、両者とも血縁関係はありません。

このように、遠山利景は、激動の戦国時代を生き抜き、江戸時代に旗本として家名を残した武将です。その波乱に満ちた生涯は、後世に語り継がれています。

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