松平乗紀

松平乗紀（まつだいら のりただ）

松平乗紀は、江戸時代前期から中期にかけての大名で、信濃国小諸藩の第2代藩主、後に美濃国岩村藩の初代藩主となりました。乗政流大給松平家の2代目にあたります。官位は従五位下、美作守、兵庫頭、能登守を歴任しました。

生涯

延宝2年（1674年）、小諸藩初代藩主・松平乗政の長男として生まれました。貞享元年（1684年）に父が亡くなると、わずか11歳で家督を継ぎ、小諸藩主となりました。『土芥寇讎記』には、当時の乗紀について「家老が悪人である」「人に誑かされている」と記されていますが、一方で領内の統治はよくできていたと評価されています。幼少期には実母と5歳で死別し、父の正室である覚照院（松浦鎮信の娘）に養育されました。

元禄元年（1688年）、御詰衆に任命され、元禄2年（1689年）には16歳で従五位下・美作守に叙せられました。元禄3年（1690年）には朽木稙昌の娘・久と結婚しています。元禄6年（1693年）には本所に下屋敷を拝領し、元禄8年（1695年）には嫡男の吉十郎（後の松平乗賢）が誕生しました。

元禄9年（1696年）、23歳で大坂加番に任じられ、大坂城へ赴任。元禄10年（1697年）には養母の覚照院が亡くなり、麻布の光林寺に葬りました。元禄14年（1701年）には能登守に改められ、半蔵門の守備を担当しました。

元禄15年（1702年）、幕府の命により、越後高柳藩から国替えとなった丹羽氏音の後を受け、美濃岩村藩へ移封されました。9月7日には岩村城に入城し、恵那郡と土岐郡の一部、計2万石を領有しました。丹羽家の菩提寺であった妙仙寺を譲り受け、小諸城内にあった菩提寺・松石山乗政寺と、その中にあった月光山日輪院薬師寺を、仏像や位牌とともに小諸から岩村へ移しました。同年12月には奏者番に任じられました。

元禄16年（1703年）6月22日、姓を石川から松平に復し、兵庫頭に任官しました。宝永元年（1704年）には紀州上使を務め、宝永6年（1709年）には第5代将軍・徳川綱吉が亡くなった際、葬儀の警護を担当しました。

正徳2年（1712年）11月には、岩村で追鳥狩を始めました。これは、当時東濃の名物であったツグミやアトリなどの野鳥を徳川将軍家への献上品とすることと、藩内の武士と百姓を集めて武技演習を行うという目的がありました。藩内の武士は全員武装して参加し、百姓は追勢子と拾い勢子に分かれて計1200人、その他老若男女が参加しました。乗紀は馬で出御し、この追鳥狩は毎年の恒例行事となりました。

また、藩校として文武所を開校し（後に知新館と改称）、文武を奨励しました。この結果、美濃国内では東の岩村藩と西の大垣藩が教育の中心地となりました。

享保元年12月25日（1717年）、江戸の桜田邸で43歳で死去しました。長男の乗賢が岩村藩主を継ぎました。

元禄時代の家臣

松平乗紀が藩主を務めた元禄時代には、以下のような家臣がいました。

家老：大野七右衛門（300石）、河合宗左衛門（300石）、丹羽瀬清左衛門（250石）
御用人役：黒岩六郎兵衛（150石）、味岡次郎左衛門（300石）
物頭役：石寺十左衛門（200石）、萩山小市左衛門（200石）、宇野勘右衛門（150石）、山川安右衛門（150石）、井野四郎右衛門（120石）
勝手用人役：内藤治兵衛（100石）、小島彌一右衛門（100石）、柴山大右衛門（100石）、今村平太夫（150石）、力丸又左衛門（20人扶持）
聞書役：矢口三左衛門（100石）
大目付役：三好友右衛門（70石）、澤井市郎兵衛（100石）、朝倉喜兵衛（20人扶持）
取次役：堀川定右衛門（100石）、前田清太夫（70石）、松岡彌次右衛門（70石）、森茂左衛門（70石）、泊久米右衛門（100石）、目賀田八郎（100石）
馬廻：山本虎之助（150石）、中恵市右衛門（3人扶持）、富永太左衛門（100石）、山本小左衛門（70石）、大山茂右衛門（70石）、川隅物右衛門（70石）、味岡甚左衛門（50石）、澤五郎兵衛（50石）、大野輿右衛門（50石）、太田藤五右衛門（50石）、藤掛治左衛門（50石）、橋本庄左衛門（50石）、小菅儀兵衛（50石）、梅村彌五右衛門（50石）、三木萬右衛門（50石）、鈴木郷左衛門（20人扶持）、太田初右衛門（50石）、萩野立左衛門（20人扶持）、佐藤勘平（20人扶持）、境野久兵衛（100俵3人扶持）

参考文献

『岩村町史』「十五 岩村藩主時代 3 松平氏」 p193～p227 岩村町史刊行委員会 1961年
『恵那郡史』「第七篇 第二十八章 諸藩分治 其一 岩村藩 松平氏七代」 p218～p230　恵那郡教育会　大正15年（1926年）

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