葉ろう石

葉ろう石：ロウのような感触を持つ鉱物

葉ろう石(pyrophyllite)は、層状ケイ酸塩鉱物の一種です。化学組成はAl₂Si₄O₁₀(OH)₂で、その名の通り、触るとロウのような滑らかな感触が特徴です。比較的軟らかい鉱物であり、熱水変質作用を受けた岩石中に多く産出されます。

葉ろう石は、カオリナイトやセリサイトなどの似た鉱物、あるいは石英と共に産することが多く、これらをまとめて「ろう石」と呼びます。肉眼や顕微鏡での識別は難しいため、X線粉末分析(XRD)や蛍光X線分析(XRF)といった分析手法を用いて、それぞれの鉱物の種類と含有量を調べることが一般的です。

日本最大の葉ろう石産地：岡山県備前市

日本の葉ろう石の生産量で最大規模を誇るのが、岡山県備前市三石地区の台山を中心とした地域です。この地域では、地質学的条件が葉ろう石の生成に適していたため、大規模な鉱床が形成されたと考えられています。

葉ろう石の多彩な表情：広島県庄原市の例

広島県庄原市の勝光山では、葉ろう石が他の鉱物と共生した独特の岩石が見られます。青灰色のコランダムと共生するものは「とら石」、淡紫色のダイアスポアと共生するものは「ふじ石」と呼ばれ、それぞれ異なる色合いと模様を見せています。これらの岩石は、葉ろう石の多様な産状を示す好例と言えるでしょう。

葉ろう石の用途

葉ろう石は、その独特の性質から様々な用途に利用されています。

陶磁器産業: 焼成時の熱膨張を抑えるために粘土に添加され、製品の品質向上に貢献しています。葉ろう石の添加によって、焼き物のひび割れや変形を防ぎ、より精緻な製品を作ることを可能にしています。

[篆刻]]: 寿山石や青田石など、特に美しい模様を持つ葉ろう石は、篆刻]の材料として珍重されています。その滑らかな質感と美しい[[色合いは、芸術作品としての価値を高めています。

葉ろう石は、私たちの身の回りの様々な製品に利用されている、重要な鉱物資源の一つです。その多様な性質と用途は、今後も研究開発が進み、新たな可能性が拓かれることが期待されています。

参考文献

沼野忠之　『岡山の鉱物』　日本文教出版〈岡山文庫〉、1980年
黒田吉益・諏訪兼位　『偏光顕微鏡と岩石鉱物 第2版』　共立出版、1983年
豊遙秋・青木正博　『検索入門 鉱物・岩石』　保育社、1996年
国立天文台編　『理科年表 平成19年』　丸善、2006年

関連用語

鉱物
ケイ酸塩鉱物
鉱物の一覧
ろう石
粘土鉱物

外部リンク

Pyrophyllite（mindat.org）
* Pyrophyllite Mineral Data（webmineral.com）

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