葉護太子

葉護太子（ようこたいし）

葉護太子（生年不詳 - 758年?）は、回鶻（ウイグル）可汗国の皇太子であり、登里羅没蜜施頡翳徳蜜施毘伽可汗（テングリデ・ボルミシュ・イリ・イトミシュ・ビルゲ・カガン）の長男です。また、登里羅汨没蜜施頡咄登蜜施合倶録毘伽可汗（テングリデ・クト・ボルミシュ・イリ・ツトミシュ・アルプ・キュルグ・ビルゲ・カガン）の兄にあたります。「葉護（ヤブグ）」はテュルク系国家における称号の一つで、彼の名は史料には残されていません。便宜上、ここでは葉護太子と表記します。

唐における地位

葉護太子は、唐において以下の官職と爵位を与えられました。

官職：司空
封王：忠義王

安史の乱での活躍

757年、唐は安史の乱の最中にあり、粛宗は回紇の力を借りて反乱を鎮圧しようとしました。9月、粛宗は敦煌王李承寀に回紇の公主を娶らせ、葉護太子は将軍の帝徳らと共に4千余りの兵を率いて唐を支援するため出兵しました。この時、粛宗は大いに喜び、盛大な宴で葉護太子を歓待しました。また、粛宗は討伐軍の元帥である広平王李俶（後の代宗）に、葉護太子と兄弟の誓いをさせ、手厚く遇しました。

葉護太子は広平王を兄と呼び、唐軍との連携を深めました。9月には、葉護太子率いる回紇の使節団13人がまず扶風に到着し、朔方軍の将士と会見しました。僕射の郭子儀は彼らを歓迎し宴を開こうとしましたが、葉護太子は「唐の国家が危難にある時に、遠方から援助に来たのだから、宴会で暇を潰すわけにはいかない」と固辞しました。しかし、郭子儀は強く引き止めたため、宴が行われました。宴後、葉護太子はすぐに出発し、その軍には毎日羊200頭、牛20頭、米40石が食料として支給されました。

香積寺付近での戦いにおいて、賊軍は精鋭騎兵を唐軍本陣の東に隠し、背後から襲撃しようとしました。朔方左廂兵馬使の僕固懐恩は葉護太子に救援を求め、葉護太子はこれに応じて賊軍を攻撃し、敵を全滅させました。この勝利により、唐軍は西京（長安）を奪還しました。その後、広平王と郭子儀は回紇軍と共に陝州の西で賊軍と戦いました。葉護太子は将軍の車鼻施吐撥裴羅らを率いて南山沿いに東進し、谷で賊軍の伏兵を打ち破りました。郭子儀軍は賊軍の勢いに押されて一時退却しましたが、回紇軍が白い旗をなびかせて進撃し、背後から攻撃したため、賊軍は大敗を喫しました。唐と回紇の連合軍は、逃げる賊軍を20里余り追撃し、戦死者は数えきれないほどでした。この戦いで、10万以上の敵兵を討ち取り、屍は30里も続いたと伝えられています。賊軍の武将である厳荘は、この大敗を安慶緒に報告し、安慶緒は恐れて東京（洛陽）を放棄し、黄河を渡って逃亡しました。その後、葉護太子は広平王と郭子儀と共に東京に入城しました。広平王からは、錦、毛氈、宝、貝などの贈り物を授与されました。

11月、粛宗が西京に帰還すると、葉護太子は東京から西京に向かいました。粛宗は百官に命じて長楽駅で出迎えさせ、宣政殿で宴を開き、葉護太子を労いました。宴席では、粛宗から錦、絹織物、金銀の器皿などが贈られました。葉護太子が西域へ帰る際、粛宗は「国家のために大きな功績を挙げたのは卿らの力である」と感謝の言葉を述べました。葉護太子は、回紇軍は沙苑に駐屯しており、一旦霊夏に帰還して馬を補充した後、范陽を占領し、残党を討伐すると述べました。この功績に対し、粛宗は葉護太子を司空に任命し、忠義王に封じ、毎年絹2万匹を贈ることを約束しました。粛宗は詔で、葉護太子の功績を称え、唐との深い絆を強調しました。

その後

759年4月、回紇の葛勒可汗が死去した際、葉護太子はすでに殺害されていたため、弟の移地健（牟羽可汗）が後を継いだとされています。このことから、葉護太子は帰国後間もなく殺害されたと推測されています。

参考史料

『旧唐書』（本紀第十、列伝一百四十五）
『新唐書』（列伝一百四十二上）

関連項目

ウイグル
安史の乱
安禄山
郭子儀
* 粛宗 (唐)

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