著作権法の歴史 (アメリカ合衆国)

アメリカ合衆国著作権法の歴史

アメリカ合衆国の著作権法は、独立後、州ごとの独自の法整備を経て、1790年に連邦法として初めて制定されました。この法律は、イギリスのアン法の影響を強く受けており、著作権保護期間は14年、更新でさらに14年の計28年とされていました。

その後、1947年からは合衆国法典第17編に収録され、連邦議会による頻繁な改正を経て現代に至っています。1998年から2014年までの16年間だけでも、20本以上の改正法が制定されており、その中には国際条約への対応による大幅な改正も含まれます。

主要な改正点

アメリカ合衆国著作権法の主な改正点を時系列で見ていきましょう。

1790年: 初の連邦著作権法。著作権保護期間は14年＋更新で14年。
1831年: 著作権保護期間を28年＋更新で14年に改正。
1891年: 国際著作権改正法。海外著作物の国内での権利保護規定を追加。
1909年: 著作権保護期間を28年＋更新で28年に改正。
1976年: 著作権保護期間を75年または著作者の死後50年に改正。未発表の著作物も保護対象に。
1988年: ベルヌ条約履行法。ベルヌ条約への加盟に伴う改正（無方式主義の採用など）。
1992年: 更新手続きの改正。
1994年: ウルグアイ・ラウンド協定法。GATT交渉結果に基づき、外国著作物の著作権回復。
1998年: ソニー・ボノ著作権延長法。著作権保護期間をさらに延長。
1998年: デジタルミレニアム著作権法 (DMCA)。デジタル著作物に関する著作権侵害の罰則と免責規定を明確化。
* 2000年: 職務著作物に関する改正。

植民地時代と独立初期

アメリカ合衆国がイギリスの植民地であった時代は、言論や出版の自由が厳しく制限されていました。一部地域では出版特許制度がありましたが、著作者個人の権利保護を目的とした著作権法は存在しませんでした。

独立後、各州は独自の著作権法を制定。1783年、コネチカット州が最初に州レベルの著作権法を制定しました。この法律は、未印刷の書籍、小冊子、地図などを対象とし、14年＋更新で14年の保護期間を定めていました。ノア・ウェブスターは、この法律の制定に貢献した人物として知られています。

1787年のアメリカ合衆国憲法第1条では、著作権に関する立法権限が連邦政府に与えられました。これは、フェデラリストと反フェデラリストの意見対立が多い中で、異例の満場一致で可決された条項です。

連邦法の整備

憲法に基づき、1790年に連邦著作権法が制定されました。この法律はイギリスのアン法と多くの共通点があり、「学問の奨励」を目的としていましたが、その背景には、著作物ビジネスの振興という目的もあったと考えられています。

この法律では、著作物の登録が権利保護の条件とされ、方式主義が採用されていました。保護期間は、コネチカット州法と同様に14年＋更新で14年でした。また、保護対象はアメリカ合衆国籍の著作者と米国内で流通する著作物に限定されていたため、海賊版出版が盛んに行われる時代もありました。

著作物の保護対象の拡大

当初、著作物の保護対象は書物、地図、図表に限定されていましたが、その後、音楽、写真、絵画、彫刻、映画、録音物などが順次追加されていきました。

国際条約と大幅改正

著作物の国際流通の増加に伴い、アメリカ合衆国は、万国著作権条約、レコード保護条約、ベルヌ条約、TRIPS協定、WIPO著作権条約など、多くの国際条約に加盟しました。特に、ベルヌ条約への加盟（1988年）は、無方式主義への転換や建築著作物の保護対象化など、大きな改正をもたらしました。

1976年の著作権改正法では、未発表著作物の連邦法による保護、フェアユースの明確化、著作物定義の拡大など、大きな改革が行われました。これは、映画、テレビ、コンピューター・プログラムなどの発展に対応したものです。

デジタル著作物への対応

インターネットの普及に伴い、デジタル著作物の保護が重要な課題となりました。1998年のDMCAは、デジタル著作物に関する著作権侵害の罰則とインターネット事業者の免責規定を定めましたが、削除要請に関する問題点も指摘されています。DMCA以降も、デジタル著作物に関する法案は提出されていますが、大幅な改正は進んでいません。

今後の課題

デジタル著作物の普及に伴い、消尽論の適用範囲の拡大や、著作権者・利用者・インターネットサービス事業者間の利害調整などが今後の課題として残されています。

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