蔣光鼐

蔣光鼐：粤軍から福建事変、そして建国へ至る波瀾万丈の生涯

蔣光鼐（しょうこうだい、字：憬然）は、中華民国、中華人民共和国の軍人にして政治家である。貧しい家庭に生まれながらも、優れた学力と軍事才能で頭角を現し、中国の近代史において重要な役割を担った人物として知られている。本稿では、彼の生涯を、粤軍での活躍から福建事変、抗日戦争、中華人民共和国建国後の活動までを時系列に沿って詳細に解説する。

粤軍での活躍と北伐への参加

蔣光鼐は、進士の祖父と塾教師の父を持つ家系に生まれたものの、彼が生まれた頃にはすでに家計は苦しかったという。優秀な成績で学費免除を受け、東莞師範学堂に入学。在学中に中国同盟会に参加し、革命への道を歩み始める。その後、黄埔陸軍小学、南京陸軍中学と進み、辛亥革命勃発時には武昌へ急行、革命軍として清朝軍と戦い、その後の二次革命にも参加した。敗北後は日本に亡命し学んだ後、帰国後は護法運動に参加。東征などでの軍功により、順調に昇進を重ねていった。

1925年、国民政府成立時には陳銘枢率いる国民革命軍第4軍第10師の副師長に就任。翌年の北伐では、陳銘枢に従い呉佩孚率いる直隷派を撃破、国民革命軍第4軍が「鉄軍」と呼ばれるほどの活躍に貢献した。武漢攻略後は第10師が第11軍に拡充され、蔣光鼐は副軍長兼師長に任命されるなど、その地位は着実に高まっていった。

第19路軍と淞滬抗戦

1927年の蔣介石による上海クーデターでは、陳銘枢と共に蔣介石を支持。その後も蔣介石を支持し、反蔣介石派との戦闘で軍功を重ねた。1930年、蔣介石の命令により編制された第19路軍では総指揮に任命され、蔡廷鍇と共に軍の指揮を執った。

当初は江西省などで中国共産党掃討に従事するも、紅軍の予想以上の戦闘力に苦戦。この経験から、蔣介石の共産党掃討への姿勢に疑問を抱き始めるようになる。その後、第19路軍は南京・上海の防衛線に配置換えされ、1932年1月、上海に侵攻してきた日本軍と激突（第一次上海事変、淞滬抗戦）。30日以上にわたる激戦の末、撤退を余儀なくされたものの、その勇猛果敢な戦いぶりは中国国内で高く評価された。

福建事変とその後

淞滬抗戦後、第19路軍は共産党掃討のため福建省へ移動することになる。しかし、蔣光鼐と蔡廷鍇は、安内を攘外に優先させる蔣介石の方針に反発し、密かに蜂起の準備を進めていた。1933年1月、蔣光鼐は福建省政府主席兼民政庁長に任命されるが、同年11月、李済深、陳銘枢らと福建人民政府を樹立、蔣介石への反旗を翻した（福建事変）。人民政府委員、財政部長に就任するも、わずか2ヶ月で政府は崩壊。第19路軍は解体され、蔣光鼐は香港へ逃亡した。

抗日戦争と中華人民共和国建国後

1937年の日中戦争勃発後、蔣光鼐は蔣介石の国民政府に復帰。第4戦区長官部参謀長、第7戦区副司令長官などを歴任し、抗日戦争の前線で活躍した。1946年には李済深らと中国国民党民主促進会を結成するなど、政治活動にも関与。

中華人民共和国成立後も北京入りし、新政権に参加。北京市政府委員、紡績工業部部長、全国政治協商会議常務委員、中国国民党革命委員会中央常務委員などを歴任した。1967年6月8日、北京で病没。享年80歳だった。

蔣光鼐の生涯は、中国の激動期を生き抜いた軍人・政治家の典型例と言えるだろう。彼の複雑な立場と、時代状況に応じた行動は、近代中国史を理解する上で重要な示唆を与えてくれる。

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