蔭位

蔭位（おんい）とは

蔭位とは、律令制下において、高位の貴族の子孫が、父祖の位階に応じて一定の位階を授けられる制度です。蔭階（おんかい）とも呼ばれ、「父祖の恩恵によって位階を得る」という意味を持ちます。この制度は、中国の門蔭制を基に導入されましたが、日本独自の社会構造に合わせて調整されました。

制度の概要

蔭位の制度は、大宝律令によって正式に定められました。選叙令によると、蔭位の対象となるのは、21歳以上になった皇族、五世王の子、そして諸臣の三位以上の子と孫、五位以上の子です。勲位や贈位を受けた者も蔭位の対象となりました。この制度は、唐の律令制における任子制を模倣したものでしたが、日本では対象者の範囲が狭められ、授与される位階は高めに設定されました。これは、日本の貴族社会が家柄を重視する特性を反映しています。

位階の例

以下に、蔭位によって与えられる位階の例を挙げます。

皇族・諸王

親王の子：従四位下
諸王の子：従五位下
五世王の嫡子：正六位上
（庶子の場合、位階は一段階低くなります。）

諸臣

一位の嫡子：従五位下
以下、位階に応じて逓減
従五位の嫡子：従八位上
（庶子の場合、位階は一段階低くなり、孫の場合はさらに一段階低くなります。）

蔭位制の特徴

蔭位制は、家柄を重視する貴族社会において、特権階級の地位を世襲的に継承させるための重要な仕組みでした。この制度によって、高位貴族の子弟は、能力や功績に関わらず、一定の官位を得ることができました。しかし、蔭位による任官は、必ずしも実力主義とは両立せず、官僚の質の低下を招くという批判も存在しました。

関連項目

親の七光り
縁故主義
縁故採用
縁故資本主義
世襲
課試
世襲貴族

参考文献

井上光貞・関晃・土田直鎮・青木和夫 校注『律令』（日本思想大系新装版、岩波書店、平成6年（1994年）） ISBN 978-4-00-003751-8

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