薛禄

薛禄（せつろく）：明朝初期の勇将

薛禄（1358年 - 1430年）は、明代初期に活躍した軍人です。膠州膠西県（現在の山東省膠州市）出身で、その生涯は明朝の建国と初期の安定に大きく貢献しました。

生い立ちと軍歴

薛禄は薛遇林の六男として生まれました。20歳になる前に軍に入り、兵卒から身を起こしました。軍中では「薛六」と呼ばれ、その武勇と才能は早くから注目を集めました。彼は幾度となく北伐に参加し、その経験を通じて武将としての実力を磨いていきました。

靖難の変での活躍

1399年、靖難の変が勃発すると、薛禄は燕王朱棣の挙兵に騎士として参加し、その先頭に立って九門を制圧するという大きな功績を挙げました。真定の戦いでは、敵将の李堅を槍で打ち落とし捕獲するという武勇を示し、指揮僉事に抜擢されました。その後も、永平の救援や大寧、富峪、会州、寛河の攻略など、数々の戦いで活躍し、指揮同知へと昇進しました。

1400年、大同攻略戦では先鋒を務め、白溝河の戦いでは済南まで敵を追撃し、指揮使に転じました。東昌の戦いでは、わずか50騎で数百の敵兵を打ち破るという驚異的な戦果を上げました。

燕王朱棣が盛庸に敗れて北平に逃げ帰った際には、盛庸が真定の諸将に命じて威県・深州に進出させ、燕軍の帰路を遮断しようとしました。しかし、1401年、薛禄はこれを撃退し、滹沱河の戦いでは、劣勢の状況下でも敵陣に何度も突入して南軍を打ち破りました。また、単家橋の戦いでは敵に捕らえられるも、縄を解き脱出して反撃し、平安を破るなど、その勇猛さは際立っていました。順徳、大名、彰徳の攻略や、西水寨の戦いでは敵将の花英を生け捕りにするなど、数々の戦いで勝利に貢献しました。1402年、東阿、東平、汶上を攻略し、淝河、小河、霊璧での連戦連勝により、薛禄の功績は最高位に達し、南京入城後には都督僉事に抜擢されました。

その後の軍事活動と貢献

1408年、薛禄は都督同知に昇進し、1410年には驃騎将軍となり、永楽帝の第一次漠北遠征に従軍し、右都督に進みました。1412年には、武臣の子弟への教育の必要性を訴え、永楽帝の許可を得て、数万の若年者を実習させました。1417年には北京城の造営を監督するなど、軍事だけでなく行政面でもその才能を発揮しました。

1420年、北京が都に定められると、薛禄は奉天靖難推誠宣力武臣の位を受け、陽武侯に封じられました。その後も、1422年には開平を守り、1423年と1424年には永楽帝の漠北遠征に従軍し、1424年には長興県での反乱を鎮圧するなど、第一線での活躍を続けました。

洪熙帝の即位後、薛禄は左府を管掌し、太子太保の位を加えられました。1425年には総兵官となり、塞外の防備に当たり、鎮朔大将軍の印を受けて北辺を巡察しました。

宣徳帝の即位後も、薛禄は北京に召還され、備辺五事を上奏しました。その後、再び北辺の巡察に派遣され、1426年の漢王朱高煦の乱鎮圧では先鋒を務めました。楽安城を包囲し、朱高煦降伏後には治安維持にあたりました。1427年には畿南諸府の城池を巡視し、軍律を厳守させました。また、大将軍の印を受けて開平に北巡し、宣府に駐屯し、敵の侵攻を撃退しました。1428年には漠北遠征に従い、寛河で敵を破り、薊州鎮、永平に駐屯して辺境の守りを固めました。1430年には鳳凰嶺で敵を破り、太保の位を加えられました。

晩年と死、そして遺産

薛禄は、永寧衛の団山や鵰鶚、赤城、雲州、独石に城堡を築くことを上奏し、36000人もの軍民を動員して工事を監督しました。しかし、1430年6月に病にかかり、北京に召還され、7月23日に73歳でその生涯を閉じました。死後、鄞国公の位を追贈され、「忠武」と諡されました。

薛禄の死後、爵位は孫の薛詵が継ぎました。彼は、明朝の初期を支えた偉大な武将として、その名を歴史に刻んでいます。

まとめ

薛禄は、その武勇と戦略眼、そして優れた行政手腕により、明朝の初期を支えた重要な人物です。彼の生涯は、明朝の勃興期における軍事と政治の両面における重要な役割を示しています。靖難の変での活躍から、その後の数々の戦い、そして北辺の守備まで、彼の功績は多岐にわたり、後世に大きな影響を与えました。彼の物語は、明朝の歴史を語る上で欠かせないものとなっています。

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