藤原乙麻呂

藤原乙麻呂（ふじわら の おとまろ）

藤原乙麻呂は、奈良時代に活躍した公卿です。名は乙万呂、弟麻呂とも記されます。藤原南家の祖である左大臣・藤原武智麻呂の四男として生まれました。最終的な官位は従三位・武部卿。

生涯

天平9年（737年）、父・武智麻呂を含む藤原四兄弟が亡くなると、乙麻呂は従兄弟である北家の永手、式家の広嗣と共に、従六位上から従五位下へと叙せられました。その後、兵部少輔・大輔を歴任し、天平19年（747年）には従五位上に昇叙されています。

孝謙朝に入ると、乙麻呂は異例の昇進を遂げます。天平勝宝元年（749年）には二階級昇進して正五位上となり、翌天平勝宝2年（750年）には宇佐八幡の託宣により、正五位上・大宰少弐から一躍従三位・大宰帥に昇進しました。

しかし、天平勝宝4年（752年）に大宰帥を紀麻路に譲ってからの約5年間、乙麻呂の動静は明らかではありません。天平宝字元年（757年）には美作守に左遷されており、この背景には、天平勝宝2年（750年）の宇佐八幡の託宣を受けた異例の昇進が、当時政権を主導していた兄・仲麻呂との関係悪化を招いた可能性が指摘されています。

その後、仲麻呂との関係が改善したためか、天平宝字3年（759年）には武部卿に任ぜられました。しかし、天平宝字4年（760年）6月の光明皇太后崩御後まもなく薨去。最終官位は武部卿従三位でした。藤原仲麻呂政権の強力な後ろ盾であった光明皇太后、そして同政権内で軍事面を担っていた乙麻呂の相次ぐ死去は、政権にとって大きな痛手となりました。

官歴

『続日本紀』に記載された乙麻呂の官歴は以下の通りです。

時期不詳：従六位上
天平9年（737年）9月28日：従五位下
天平17年（745年）9月18日：兵部少輔
天平18年（746年）9月20日：兵部大輔
天平19年（747年）正月20日：従五位上
天平勝宝元年（749年）11月26日：正五位上（越階）
天平勝宝2年（750年）3月12日：大宰少弐。10月1日：従三位（越階）、大宰帥
天平勝宝4年（752年）：大宰帥を辞任か
天平宝字元年（757年）6月16日：美作守
天平宝字3年（759年）11月5日：武部卿
天平宝字4年（760年）6月17日：薨去（武部卿従三位）

系譜

『尊卑分脈』によると、乙麻呂の系譜は以下の通りです。

父：藤原武智麻呂
母：紀麻呂の娘
妻：石川建麻呂または石川連麻呂の娘
男子：藤原是公（727-789）
妻：橘真都我 - 橘佐為の娘、のち藤原是公の妻
男子：藤原是人
生母不詳の子女
* 女子：藤原今河室

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