藤原基忠 (非参議)

藤原基忠：鎌倉時代を生きた公卿

藤原基忠（ふじわら の たかただ）は、鎌倉時代前期に生きた公卿であり、左大臣を務めた藤原隆忠の長男として生まれました。彼の生涯は、当時の公家社会の状況や、彼自身を取り巻く人間関係によって彩られています。

生涯

基忠は、祖父である基房と叔父の松殿師家が治承・寿永の乱の最中に失脚する中、父・隆忠は連座を免れ、その後も順調に出世しました。基忠自身も、元久2年（1206年）に従三位となり、公卿の仲間入りを果たします。その後、従二位まで昇進しますが、参議以上の議政官にはなることはありませんでした。そして、嘉禄元年（1226年）に出家し、その生涯を閉じました。

妻の駆け落ち事件

基忠の生涯において特筆すべきは、妻の駆け落ち事件です。伝えられるところによると、基忠の妻は源雅行の娘でしたが、異母弟である源親行と恋仲になり、駆け落ちを試みました。しかし、2人は後に雅行に連れ戻されます。この事件後、雅行は考えを改めない2人に憤り、家臣に命じて2人を斬り捨て、遺体を六条朱雀に晒したとされています。

この事件について、藤原定家は親行とその姉（基忠の妻）の「悪行」を非難しつつも、雅行が独断で実の子を殺害した行為を糾弾しています。定家は、雅行も親行も公家である以上、その処罰は朝廷に委ねるべきであると考えていました。

角田文衛は、基忠の出家の背景には、妻の駆け落ち事件があったのではないかと推測しています。この事件が、基忠の心境に大きな影響を与えた可能性は否定できません。

系譜

父：藤原隆忠
母：源通家の娘
妻：不詳
男子：藤原尊基
男子：忠瑜
女子：尋源法印室


藤原基忠の生涯は、公家社会の栄枯盛衰や、複雑な人間関係の中で生きた人々の姿を映し出しています。妻の駆け落ち事件は、彼の人生に大きな影を落とした出来事として、後世に語り継がれています。

もう一度検索