藤原隆忠

藤原隆忠：激動の時代を生きた公卿

藤原隆忠（ふじわら の たかただ）は、平安時代末期から鎌倉時代前期にかけて活躍した公卿です。摂政を務めた松殿基房の長男として生まれましたが、その人生は決して平坦ではありませんでした。

生い立ちと不遇の時代

隆忠は、摂関家である松殿基房の長男として誕生しました。しかし、後に異母弟の師家が生まれると、状況は一変します。母方の祖父である藤原忠雅が太政大臣を務めていた師家の方が、生母の家柄が上であるという理由から、嫡男とされたのです。これにより、隆忠は「落胤」（当時は庶子の意味）と呼ばれるようになり、不遇の時代を送ることになります。

承安4年（1174年）に元服し、正五位下・侍従に叙任されます。しかし、これは異例の措置でした。当時、関白の子息であっても、初叙の際には嫡男のみに正五位下が授けられ、庶子は従五位上に叙されるのが慣例だったからです。この叙位に対し、基房の弟である九条兼実は激しく非難しています。

承安5年（1175年）には正四位下・右近衛中将に叙任され、安元2年（1176年）には従三位に叙されて公卿に列しました。

政変と復帰

治承3年（1179年）9月に正三位に昇叙されますが、同年11月に治承三年の政変が発生します。父・基房が平清盛によって流刑にされると、隆忠も連座して解官されてしまいます。しかし、平家が都落ちし、源義仲が権力を握った寿永2年12月（1184年2月）に権中納言として官界に復帰を果たします。

翌寿永3年（1184年）正月には源義仲が敗死し、弟・師家が摂政内大臣を罷免されますが、隆忠は連座することなく、同年11月には従二位に昇進します。

順調な昇進と異母弟との関係

その後は、元暦2年（1185年）に正二位、文治5年（1189年）に権大納言、建久5年（1194年）に大納言、建仁2年（1202年）に内大臣と順調に昇進を重ねます。元久元年（1204年）には右大臣に任ぜられ、前摂政内大臣の散位官のまま留め置かれていた異母弟・師家の官職を追い越しました。

承元元年（1207年）には左大臣に、建暦元年（1211年）には従一位に昇り、承久の乱直前の承久2年（1220年）に出家して官界から引退しました。

『六代勝事記』の作者？

近年では、『六代勝事記』の作者として有力視されています。

系譜

父：松殿基房
母：三条公教の娘 - 上西門院女房
妻：源通家の娘
長男：藤原基忠
次男：藤原教忠（1189-?）
妻：藤原実宗の娘
男子：聖基（1204-1267）
生母不詳の子女：
男子：道愉
女子：園基氏室、基顕の母
* 女子 - 号大覚寺尼

藤原隆忠は、不遇な生い立ちから、政変による失脚、そして官界への復帰と昇進、異母弟との複雑な関係など、波乱に満ちた生涯を送りました。その足跡は、平安末期から鎌倉初期という激動の時代を生き抜いた公卿の姿を今に伝えています。

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