藤原多美子

藤原多美子（生年不明 - 仁和2年10月29日（886年11月28日））は、平安時代中期に活躍した女官であり、清和天皇の女御として知られています。彼女の父は右大臣を務めた藤原良相であり、名門藤原氏の血筋を引いています。

多美子は、貞観5年（863年）に無位から従四位下に叙せられたことを皮切りに、その後のキャリアを着実に積み重ねていきます。翌貞観6年（864年）正月27日には、詔によって清和天皇の女御となり、天皇の寵愛を受けました。同年8月には従三位に昇進し、貞観9年（867年）には正三位、元慶元年（877年）には従二位と、その位階は順調に上昇しました。

元慶7年（883年）には、さらに正二位に昇叙され、その地位を確固たるものとしましたが、仁和2年（886年）10月に突然熱を発し、そのまま亡くなりました。彼女の死は、当時の人々にとって大きな衝撃であったと考えられます。

多美子のエピソードとして特に有名なのは、清和天皇が崩御された後、天皇が残された手紙類を漉いて作った料紙で大乗経を写経し、供養したというものです。この逸話は、『十訓抄』にも収録されており、多美子の天皇への深い愛情と、その後の供養の念を物語っています。このエピソードは、彼女の献身的な姿勢と、故人への哀悼の情を現代に伝えるものとして、後世に語り継がれています。

藤原多美子は、平安時代という時代背景の中で、天皇の寵愛を受けながらも、その地位に甘んじることなく、位階を重ね、最後は正二位にまで昇りつめた、稀有な女性でした。彼女の生涯は、当時の貴族社会における女性の生き方の一つの側面を示すとともに、清和天皇との深い絆を示すものでもあります。

彼女の死後、天皇の遺品を使い供養するという行為は、単なる儀式的な行為ではなく、天皇への深い愛情と敬意の念から生まれたものであり、彼女の人となりを深く理解する上で重要なエピソードと言えるでしょう。藤原多美子は、その生涯とエピソードを通して、歴史に名を残す女性として、今もなお、私たちの心に深く刻まれています。

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