藤原季能

藤原季能（ふじわら の すえよし）は、平安時代後期から鎌倉時代初期にかけて生きた公卿であり、歌人としてもその名を残しています。藤原北家末茂流の流れを汲み、父は非参議の藤原俊盛です。最終的な官位は正三位・兵部卿にまで昇りました。

六条藤家出身の季能は、保元3年（1158年）に従五位下に叙せられ、政界でのキャリアをスタートさせます。後白河法皇の院近臣として活動する傍ら、父の従妹にあたる八条院にも親子で仕え、越前国、丹後国、遠江国、周防国、讃岐国、越後国といった地方の国司を歴任しました。

治承3年（1179年）には越前守に任じられますが、この人事は当時の政局に大きな波紋を呼びました。それまで越前は平重盛が長年にわたり知行国としており、重盛の死後にはその子である維盛が相続していました。しかし、維盛から知行国を没収した後、院は季能を越前守に据えたのです。これに激怒した平清盛は、後白河法皇を鳥羽殿に幽閉し、院近臣を大量に解任するという強硬手段に出ました（治承三年の政変）。この政変によって、季能も一時的に越前守の職を解かれています。

しかし、翌治承4年（1180年）には、清盛の意向により後白河法皇が季能の邸宅に身を寄せることになり、平家側からも一定の信頼を得ていたことが伺えます。この背景には、季能の妻が平基盛（清盛の次男）の娘であったことが影響していると考えられます。対立を深める法皇と平家の間で、季能は一種の潤滑油としての役割を担っていたのです。

治承・寿永の乱を経て平家が没落した後も、季能は後白河法皇の側近として仕え、一定の地位を維持しました。寿永2年（1183年）には従三位に叙せられ、公卿の仲間入りを果たします。文治元年（1185年）に源頼朝の介入によって宮廷内の実権が藤原兼実ら親鎌倉派に移ると、季能は高階泰経、藤原隆房、藤原実教らと共に法皇側近派を組織し、暗にこれに対抗したとされています。

建久4年（1193年）には正三位に進み、承元4年（1210年）に出家しました。

歌人としても才能を発揮し、藤原俊成を師と仰ぎました。娘の一人は俊成の次男である藤原定家に嫁いでいます。

系譜
父：藤原俊盛
母：源雅兼の娘
妻：平基盛の娘
男子：藤原範実
生母不詳の子女
次男：藤原長季（1187年 - ?）
男子：藤原経季
男子：藤原季輔
男子：覚能
女子：藤原定家室

藤原季能は、激動の時代を生き抜き、政治と文化の両面で足跡を残した人物として、歴史に名を刻んでいます。

もう一度検索