藤原資房

藤原資房（ふじわら の すけふさ）

藤原資房は、平安時代中期に活躍した公卿で、藤原北家小野宮流の出身です。大納言・藤原資平の長男として生まれました。官位は正三位・参議にまで昇りました。

生涯

1015年、三条天皇の時代に、従五位下に叙爵し、官吏としてのキャリアをスタートさせました。1019年には元服し、左兵衛権佐に任官、1021年には従五位上・侍従に叙任されました。祖父である右大臣・藤原実資からの期待は大きく、実資は政敵である藤原道長から烏犀の方帯を借り受け、資房の白馬節会参加のために奔走するなど、非常に目をかけていました。また、小野宮流の有職故実を継承する役割も担っていました。

1023年、源経相の娘と結婚し、同年には右近衛少将に任官。1025年には五位蔵人および東宮蔵人を兼任しました。1026年に正五位下に昇進し、1028年には従四位下に叙せられて五位蔵人を離れました。この年の暮れには、殿上にて六位蔵人の藤原経衡から暴行を受ける事件が発生しました。これは後一条天皇の側近同士の争いであるとされています。

その後も昇進を重ね、1033年には従四位上、1035年には左近衛権中将、1036年には後朱雀天皇の大嘗祭で悠紀国司を務めた功績により正四位下に叙せられました。1038年には蔵人頭（左近衛権中将を兼任）に任命されました。しかし、この頃から後朱雀天皇と関白・藤原頼通の政治的対立が激化し、天皇側近として政務に関与する蔵人頭・資房は、頼通とその周辺から激しい敵意を抱かれるようになり、その後の人生に大きな影を落としました。この時期の資房の日記『春記』には、彼の苦悩と頼通への強い反感が記されています。

1040年に左京大夫を兼任し、1042年には参議に昇進するまで蔵人頭を務めました。この間、頼通との関係はますます悪化し、その後の昇進が参議に留まったのはこのことが大きく影響していると考えられています。1044年には従三位に叙せられました。

1045年に後朱雀天皇が崩御し、後冷泉天皇が即位すると、異母弟の尊仁親王（後の後三条天皇）が皇太弟に立てられました。資房は、春宮大夫の藤原能信と共に、春宮権大夫に任じられ、皇太弟を補佐することとなりました。頼通は、摂関家との関係が薄い尊仁親王の即位を望まず、後冷泉天皇の皇子誕生を願っていました。一方、能信は頼通の勢力を抑えるために尊仁親王を全面的に支持しました。資房は、立場上、頼通に対抗するために能信と連携する必要に迫られました。しかし、小野宮家は経済的に没落していたため、頼通に対抗するだけの政治力を確保することができませんでした。さらに、資房自身も病弱であったため、健康で長寿を保った頼通に圧倒されたといわれています。

その後、1048年と1049年には、後任の参議が資房よりも先に正三位に叙せられるなど、昇進は遅れました。1051年にようやく正三位に至りました。

1057年、父・資平に先立ち病没しました。享年51歳。最終官位は参議正三位兼春宮権大夫でした。

人物

資房は、五位蔵人時代から晩年に至るまでの日記『春記』や、蔵人の除目奉仕についてまとめた『資房抄』を編纂しました。これらの著作は、当時の宮廷社会の様子を知る上で貴重な資料となっています。

官歴

1015年：従五位下
1019年：讃岐権守、左兵衛権佐
1021年：従五位上、侍従
1023年：右近衛少将、左近衛少将
1024年：播磨権介
1025年：五位蔵人
1026年：正五位下、右近衛少将
1028年：従四位下
1029年：兼近江権介、左近衛少将
1033年：従四位上
1034年：近江介
1035年：左近衛権中将
1036年：正四位下
1038年：蔵人頭
1039年：近江介
1040年：兼右京大夫
1042年：参議、右京大夫如元
1043年：兼備前権守
1044年：従三位
1045年：兼春宮権大夫
1046年：辞右京大夫
1048年：兼伊予権守
1051年：正三位
1053年：兼周防権守
1057年：薨去

系譜

父：藤原資平
母：藤原知章の娘
正室：源経相の娘
男子：藤原資宗
男子：藤原公房
妻：源朝任娘
妻：家女房
男子：琳慶
生母不明の子女：永源

参考文献

桃裕行『古記録の研究』下（『桃裕行著作集 5』思文閣出版、1989年）
『公卿補任 第一篇』吉川弘文館、1982年
『尊卑分脈 第二篇』吉川弘文館、1987年

外部リンク

『摂関期古記録データベース』国際日本文化研究センター（『春記』の読み下し文を公開）

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