藤原長実

藤原長実：白河法皇に仕えた公家と歌人

藤原長実は、平安時代末期を代表する公家であり、優れた歌人としても知られています。藤原北家末茂流に属し、修理大夫藤原顕季を父に持ちます。正三位権中納言にまで昇進し、死後に正一位左大臣を追贈されました。八条という号で呼ばれることもありました。

白河院政期における活躍

長実の経歴は、白河天皇の院政期と深く関わっています。応徳2年（1085年）に叙爵されて以降、父・顕季と共に白河院近臣として仕え、順調に昇進を重ねました。左兵衛佐、諸国の受領などを歴任し、天仁元年（1108年）からは約6年間、長実の邸宅が白河院御所として使用されるほど、その信頼は厚かったようです。保安3年（1122年）には従三位に叙せられ公卿となり、父から修理大夫の官職を譲り受けました。白河法皇の晩年には、最も身近な側近として仕えていたと伝えられています。

大治4年（1129年）には、斎院・統子内親王の禊の前駆を務めた功績により参議に任命され、議政官となりました。これは、本来前駆を務めるべきであった他の者が都合により務めることができず、長実が代わりに務めたという経緯があったようです。同年、白河法皇の崩御後には葬儀やその後の仏事に深く関わりました。鳥羽上皇にも信任され、院別当に任ぜられるなど、その地位は揺るぎないものとなりました。さらに正三位に昇叙され、権中納言にまで昇進します。

政治家としての評価と晩年

長実の政治家としての評価は、必ずしも高くありませんでした。権中納言への就任には反対もあったとされ、没後には才能がないという厳しい評価も残されています。これは、鳥羽上皇による院近臣の入れ替え、つまり白河法皇の側近の排除という院政の潮流の中で、長実は不遇の時期を過ごした可能性を示唆しています。

長実の娘、藤原得子が鳥羽上皇の寵愛を受けたのは、長実の死後のことでした。この寵愛は、皇后となるだけでなく、近衛天皇を生むという結果をもたらし、長実は天皇の外祖父という重要な立場を得ることとなります。しかし、得子が上皇の寵愛を受けることで、正妃であった藤原璋子の怒りを買い、長実の子どもたちは処分を受けるという不幸も経験しました。得子は後に父の邸宅である八条殿を継承し、天皇の母となった後も、自身の兄弟を登用する事はなく、長兄・顕盛の遺児である俊盛などを登用しています。

歌人としての才能

政治面での評価とは対照的に、長実は和歌の才能にも恵まれていました。父や兄弟と同様に和歌への造詣が深く、自邸で歌会を開いたり、有名な歌合に出詠するなど、多くの歌を残しています。『金葉和歌集』以降の勅撰[[和歌集]]に19首もの歌が採録されていることは、その高い才能の証と言えるでしょう。

系譜とその後

長実は、藤原顕季を父、源方子（源俊房の娘）を妻としていました。娘の藤原得子（美福門院）は鳥羽上皇の皇后となり、近衛天皇を生みました。息子には、藤原顕経、藤原顕盛、藤原長輔などがいます。長実の没後、娘の得子が天皇の母となり、近衛天皇が即位したことで、長実自身も正一位左大臣を追贈されるという栄誉に浴しました。

藤原長実は、政治家として必ずしも成功したとは言えない人生を送った一方で、優れた歌人として、そして近衛天皇の外祖父という重要な役割を果たした人物であったと言えるでしょう。彼の生涯は、平安時代末期の激動の時代を反映する、複雑で興味深いものです。

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