藤巻昇

競輪界の「ドン」藤巻昇の軌跡

藤巻昇は、1948年生まれ、山梨県出身の元競輪選手であり、現在はスポーツ報知で競輪評論家として活動しています。日本競輪学校第22期生としてデビューし、立川競輪場で初勝利を飾りました。彼の選手生活は、山梨、神奈川、そして北海道へと登録地を移しながら、数々のドラマを生み出してきました。

デビューから神奈川時代

藤巻は、実父も競輪選手であったことから競輪の世界へ足を踏み入れました。3人の弟も競輪選手となり、競輪一家としても知られています。デビュー当初からその才能を発揮し、1968年には日本選手権競輪で準優勝、同月の競輪祭新人王戦では優勝を飾りました。しかし、その後は同期の福島正幸がタイトルを量産する一方で、新人王戦以外のタイトルには恵まれず、「無冠の帝王」と呼ばれることもありました。20代前半は、福島正幸の理詰めの強さに苦戦し、練習を怠ることもありましたが、25歳で心機一転、猛練習に打ち込むようになります。

北海道移籍と涙の初優勝

1973年、藤巻は夫人の故郷である北海道に移籍。この移籍が、彼が競輪界の「大御所」となる転機となりました。先に特別競輪を制したのは弟の清志でしたが、1976年、前橋競輪場で行われたオールスター競輪で、藤巻はついに悲願の初優勝を果たします。この時、彼はそれまで主としていた追い込みから先行へと戦法を転換。決勝では、世界選手権銅メダリストの菅田順和を破り、兄弟でのワンツーフィニッシュを達成しました。この勝利は、マスコミに「兄弟仁義」と評され、藤巻は涙を流して喜びました。また、この年、彼は生涯で一度の賞金王にも輝きました。

フラワーラインへの反旗

藤巻は、中野浩一が台頭してきた時代に、中野を競輪界のリーダーに育てようという気持ちを持っていました。また、徒党を組んで特定の選手を封じ込める「フラワーライン」のやり方に異を唱え、中野や高橋健二、久保千代志らと連携しました。この行動が、彼が「ドン」と呼ばれる所以となりました。しかし、同じ北日本地区の菅田順和はフラワーラインに属していたため、両勢力が混在するという特異な状況も生み出しました。

2度目の特別競輪制覇とその後

1980年、藤巻は高松宮杯競輪で2度目の特別競輪制覇を達成しました。このレースでは、中野浩一をマークし、吉井秀仁との競り合いを制して優勝。40歳を過ぎてもなお、特別競輪で活躍を続け、1987年には高松宮杯競輪で3着入賞を果たしました。40歳を超えても特別競輪で決勝に進出する選手は当時としては稀であり、20年以上にわたり第一線で活躍した彼の功績は特筆すべきものです。引退後、函館競輪場では、彼と弟の功績を称え「藤巻兄弟杯」が開催されるようになりました。

記憶に残る名選手

藤巻の特別競輪優勝回数は2回と、決して多くはありません。しかし、彼の存在は競輪史において重要な役割を果たしました。もし藤巻がいなければ、中野浩一が「ミスター競輪」として君臨していたかどうかは疑問であり、また、現在の競輪選手のトップクラスの「高齢化」の先鞭をつけたのは藤巻だったとも言えるでしょう。2018年には日本名輪会入りも果たしました。

主な獲得タイトルと記録

1968年 - 競輪祭新人王戦（小倉競輪場）
1976年 - オールスター競輪（前橋競輪場）
1980年 - 高松宮杯競輪（大津びわこ競輪場）
年間賞金王1回 - 1976年
* 通算成績2808走中634勝

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