藤掛廣幸

藤掛廣幸（ふじかけ ひろゆき）は、1949年1月31日に岐阜県で生まれた日本の多才な音楽家です。作曲家、編曲家、指揮者、シンセサイザー奏者、音楽プロデューサーとして活動しています。愛知県立芸術大学を卒業後、同大学院修士課程を修了し、作曲を石井歓、中田直宏、保科洋の各氏に師事しました。

彼のキャリアにおける重要な転換点となったのは、1977年に世界三大コンクールの一つであるエリザベート王妃国際音楽コンクールの作曲部門でグランプリを受賞したことです。これは日本人として初の快挙であり、国際的な名声を獲得するきっかけとなりました。国内でも数々の作曲コンクールで受賞歴があり、その才能は広く認められています。

海外で作品を発表する際には、「Hiro Fujikake」というペンネームを使用しています。これは、日本人の名前を英語で表記する際の「名字＋名前」の順序が、彼にとって「音楽的ではない」と感じられたため、名前を先に置くスタイルを選んだものです。過去には、日本のレコード会社が本人の確認なしに「藤掛廣」と表記してアルバムを発売しようとした際に、「日本語で表記するなら『ヒロ藤掛』としてほしい」と強く抗議し、訂正させたというエピソードも残されています。

国際的な交流も積極的に行っており、世界的なフルート奏者であるジェームズ・ゴールウェイとは3枚の共演アルバムをリリースしています。特にアルバム『妖精の森』（英語タイトル：The Enchanted Forest）は、全米ビルボード誌のクラシカル・クロスオーヴァー部門で5ヶ月連続ベスト10入りを果たし、ミリオンセラーを記録する大成功を収めました。また、著名なイ・ムジチ合奏団とオーボエの世界的名手ハインツ・ホリガーによるアルバム『日本の四季』では、全12曲の編曲を手がけ、その質の高さが評価され絶版からユニバーサル・ミュージックより2017年に再発売されています。

藤掛氏の創作活動は非常に広範にわたります。管弦楽、吹奏楽、オペラ、ミュージカル、バレエ、マンドリン、ピアノ、合唱などの純音楽作品から、テレビやラジオの放送音楽、映画音楽、CM音楽まで、多岐にわたるジャンルで多くの作品を生み出しています。「NHK特集」「ふるさと紀行」「中学生日記」「さわやか三組」といった著名な番組の音楽も手がけています。さらに、校歌、社歌、市民の歌なども作曲しており、社会に根ざした音楽活動も展開しています。

音楽プロデューサーとしても実績があり、世界デザイン博覧会の会場内・音響総合プロデューサーを務めたほか、ぎふ中部未来博では「淡墨の桜と大陶壁」のための音楽プロデュース、作曲、演奏を担当しました。演奏家としては、シンセサイザーとコンピュータを組み合わせた独自のシステム「Solo Orchestra」を確立し、自作のオペラやミュージカルなどの大規模作品を一人で演奏するコンサートを各地で行っています。シンセサイザー音楽の分野でも先駆的であり、ベルギーのレーベルから初のソロアルバム『銀河交響曲』（Galactic Symphony）をリリースしています。また、日本のマンドリン界とも関わりが深く、多数の優れたマンドリン合奏曲を創作しています。

彼の主要作品には以下のようなものがあります。

管弦楽: 縄文譜・Rope Crest（エリザベート王妃国際コンクールグランプリ受賞）、春の詩（日本交響楽振興財団作曲賞入選）、交響曲「岐阜」、交響曲「出雲」、挽歌（日本音楽コンクール入賞）
吹奏楽: ノスタルジック・ラプソディ（笹川賞1位）、シャコンヌ（笹川賞1位）、吹奏楽のための協奏的序曲（全日本吹奏楽コンクール課題曲）、白鳳狂詩曲（同課題曲）、ロックン・マーチ（同課題曲）
マンドリンオーケストラ: パストラル・ファンタジー（第1回マンドリン合奏曲コンクール2位）、じょんがら、グランド・シャコンヌ、樹魂の歌、シンフォニア・パルナソス
オペラ: 西湖伝説・金色の鳳、かかみ野の空
バレエ音楽: ブンナよ木からおりてこい、あゝ野麦峠
ミュージカル: ブンナよ木からおりてこい
* シンセサイザー音楽: 銀河交響曲、樹魂の歌、宗春爛漫（大須観音）、悠久の翔（銀座からくり）

藤掛廣幸は、作曲、編曲、指揮、演奏、プロデュースと多角的な才能を発揮し、クラシックから現代音楽、映像音楽に至るまで、幅広い分野で日本の音楽界に多大な貢献を果たしている、稀有な音楽家です。

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