藤林氏

藤林氏について

藤林氏は、日本の歴史に名を刻む二つの流れを持つ姓氏です。

大神氏流藤林氏

その一つは、北九州の古族である大神氏を起源とする流れです。大神氏の庶流が藤原氏を称した後、鎌倉時代初期の武将、緒方惟栄の玄孫である文光が初めて藤林氏を名乗りました。彼は緒方氏とも称されました。文光の孫である朝定は足利尊氏に仕え、多々良浜の戦いなどで活躍しました。室町時代を通じて足利氏の直臣として活動し、山城紀伊郡横大路に居城を構えました。

永禄の変で足利義輝が殺害されると、足利家を辞し、近衛家、織田氏、豊臣氏に仕えました。豊臣秀吉の死後、綱久は徳川家康に出仕し、曲直瀬玄朔に医術を学び、以後は江戸幕府の医官として仕えました。

横大路の本領は、同じく足利氏に仕えた庶流の家が継承し、江戸幕府旗本となりました。大和国で代官を代々務めましたが、惟真が幕命に背いたために処刑され、嗣子も切腹となり断絶しました。

伊賀の藤林氏

もう一つの流れは、伊賀流の上忍三家の一つとして知られる藤林氏です。服部家の支流から独立したとも言われていますが、確証はありません。伊賀の北東部、東湯舟郷を治めていました。当主であった藤林長門守は、服部家の服部半蔵、百地家の百地丹波と並び、伊賀の三大上忍と称されました。

藤林家の子孫である藤林保武（保義）は、伊賀甲賀四十九流といわれる忍術の諸流を集大成した忍術書『万川集海』を著しました。この書は、忍術研究における重要な資料となっています。

大衆文化における藤林氏

藤林氏は、TBS系列の時代劇『水戸黄門』にも登場します。第16部から第28部に登場する架空の忍者、かげろうお銀は、江戸時代の貞享期・元禄期における藤林一門の頭領、藤林無門の孫娘という設定です。お銀は、凋落し困窮していた藤林一門の再興を果たすべく、当初は水戸光圀の命を狙いますが、後に光圀の寛大さに触れ、己の不明を恥じて光圀一行に加わることになります。

このように、藤林氏は歴史的な武家、忍者の一族としてだけでなく、大衆文化においてもその名を知られています。

もう一度検索