蟹江幹彦

蟹江幹彦：青林堂を率いる実業家、その変遷と人物像



蟹江幹彦（かにえ みきひこ）は、1957年生まれの実業家であり、青林堂の代表取締役社長として知られています。また、オピニオン雑誌『ジャパニズム』の発行人でもあります。彼は、通名として蟹江磐彦（かにえ いわひこ）も用いています。妻である蟹江玲子（通名：渡辺レイ子）は、青林堂の専務取締役であり、『ジャパニズム』の第4代編集長を務めています。

青林堂との出会いと経営者への道



1990年代、蟹江はCD-ROM制作会社である大和堂を経営していました。当時、青林堂から出版されていた漫画家ねこぢるのCD-ROM版の販売を青林堂に打診したことがきっかけで、両者の関係が始まりました。その後、青林堂の社長であった山中潤からねこぢるの版権を譲り受け、さらに青林堂の内紛事件後、経営不振に陥っていた同社の売却話を持ちかけられました。1999年、蟹江は山中の後任として青林堂の社長に就任しました。翌2000年には、かつて休刊していた伝説的な漫画雑誌『ガロ』を復刊させ、自ら編集長も兼任しました。また、お笑い芸人の鳥肌実を発掘したことでも知られていますが、2002年には『ガロ』を事実上休刊させています。

青林堂の路線転換と保守系出版社化



2010年代頃から、蟹江は青林堂の出版路線を大きく転換させました。それまでサブカルチャー漫画を中心としていた同社を、嫌韓・嫌中路線を軸とした政治思想系の出版社へと変貌させたのです。2011年には、オピニオン雑誌『ジャパニズム』を創刊し、佐藤守、古谷経衡、桜井誠、杉田水脈、京本和也、千葉麗子、瀬戸弘幸といった保守・右派系の活動家や作家の著作を積極的に刊行しました。

蟹江自身は、この路線転換を「経営上の問題」と捉えており、「他のジャンルの売り上げが減った分を保守系の書籍が補填している」と説明しています。また、「憲法21条で言論、表現、出版の自由が認められている」とし、「自社のような本も左翼の本も出版され、読んだ上で論争が行われているのが正常な社会ではないか」と述べています。

蟹江幹彦の人物像



蟹江は、萌え系やミリタリー系の作品を好んでおり、自身が編集長を務める『ジャパニズム』の表紙に萌え系イラストが採用されているのは、彼の趣味が反映された結果です。元青林堂の関係者によると、蟹江は40代前半に大病を患い、そのことがきっかけでスピリチュアルや精神世界に興味を持つようになったといいます。神道や古事記、幸福の科学などに傾倒し、次第にネット右翼化していったとされています。蟹江本人は、特攻隊員の転生をテーマにした山口敏太郎の著書『前世』（2006年）を青林堂から出版したことが、「青林堂と右翼業界が結びついた始まりだった」と語っています。

かつて蟹江と親交のあった古谷経衡は、蟹江について「少しでも気に入らないことを言う人間は、みんな『サヨクでしょ』と言って切り捨ててしまい、それ以上考えない。『ガロ』を作った白土三平にしても水木しげるにしても『サヨクでしょ』で片付けてしまうのかもしれません」と評しています。

参考文献




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