有線役務利用放送

有線役務利用放送（ゆうせんえきむりようほうそう）とは

有線役務利用放送は、かつて総務省令である電気通信役務利用放送法施行規則に規定されていた電気通信役務利用放送の一種です。しかし、2011年6月30日に電気通信役務利用放送法が放送法に統合されたことにより廃止されました。本記事では、この廃止されるまでの有線役務利用放送について解説します。

定義

電気通信役務利用放送法施行規則第2条第2号では、有線役務利用放送は「公衆によって直接受信されることを目的とする有線電気通信の送信であって、その全部又は一部を電気通信事業を営む者が提供する電気通信役務を利用して行うもの」と定義されていました。

概要

有線ラジオ放送が有線ラジオ放送業務の運用の規正に関する法律、有線テレビジョン放送が有線テレビジョン放送法に基づいて、それぞれ有線電気通信設備を設置し業務を行うのに対し、有線役務利用放送は電気通信事業者が提供する電気通信役務を利用していました。

方式

有線役務利用放送には、主に以下の2つの方式がありました。

RF方式

RF (Radio Frequency) 方式は、有線テレビジョン放送と同様の方式です（有線テレビジョン放送ではIP方式は用いられていません）。光ファイバを用いる場合、1つの芯線で有線役務利用放送と通信を異なる波長で伝送するものと、複数の芯線で物理的に分離するものがありました。いずれの場合も、有線役務利用放送が通信に影響を及ぼすことはありませんでした。

IP方式

IP ([Internet Protocol]]) 方式は、インターネットで利用される技術を用いた方式です。有線役務利用放送を受信（視聴）することで、通信速度などに影響が及ぶ可能性がありました。高速な回線が必須となることが多く、FTTHが必要となるものが大半でしたが、ADSLを利用できるものも存在しました。IP方式では、有線役務利用放送に加えて、ビデオ・オン・デマンド]などを合わせて提供しているものも多くありました。電気[[通信役務利用放送法が適用されるのは有線役務利用放送のみであり、それ以外は電気通信役務利用放送事業者以外の事業者が行う場合もありました。

送信の方式

電気通信役務利用放送法施行規則第17条第1項には、以下の送信方式が規定されていました。

標準テレビジョン放送方式
標準衛星テレビジョン放送方式
標準衛星デジタルテレビジョン放送方式
広帯域伝送デジタル放送方式
デジタル有線テレビジョン放送方式
標準デジタルテレビジョン放送方式

著作権法における扱い

著作権法において、RF方式は同法に規定する有線放送に該当しますが、IP方式は自動公衆送信に該当します。したがって、RF方式で電気通信役務利用放送を行う事業者は有線放送事業者となりますが、IP方式の場合は有線放送事業者とはなりません。この違いにより、権利の処理も異なっていました。IP方式における放送の再送信については、NTTぷららのひかりTVにおいて、アイキャストが2008年5月9日に開始しました。

主な事業者

制度廃止時には、26の事業者が存在していました（うち衛星役務利用放送を行う電気通信役務利用放送事業者との重複が1）。

RF方式

FTTH
オプティキャスト （フレッツ・テレビ）
宮城ケーブルテレビ （宮城ケーブルテレビ&フレッツ光）
ニューデジタルケーブル （ニューデジタルケーブル&フレッツ光）
ケーブルテレビ山形 （ケーブルテレビ山形&フレッツ光）
中部テレコミュニケーション （コミュファ光テレビ）
ケイ・キャット （K-CAT eo光テレビ）
近鉄ケーブルネットワーク （KCN eo光テレビ）
ひろしまケーブルテレビ （メガ・エッグ光テレビ）
STNet （ピカラ光てれび）
九州通信ネットワーク （BBIQ光テレビ）
HFC
東京ベイネットワーク
テレビ津山
メディアリンク
愛媛CATV
ケーブルテレビジョン東京
ベイ・コミュニケーションズ
東京ケーブルネットワーク
豊島ケーブルネットワーク
ジェイコム東京
ジェイコム九州
旭川ケーブルテレビ

IP方式

ビー・ビー・ケーブル (BBTV)
KDDI （TVサービス）
アイキャスト （ひかりTV）
クーレボ
USEN （ユーネクスト）

経過措置

電気通信役務利用放送法の放送法への統合の際、有線役務利用放送は有線一般放送、事業者は有線一般放送事業者とみなされました。これは、同時に廃止された有線ラジオ放送業務の運用の規正に関する法律における有線ラジオと同じ区分です。テレビジョンにより行うものは有線テレビジョン放送ともみなされます。

関連項目

光放送
IP放送
通信と放送の融合
衛星役務利用放送

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