表参道 (原宿)

表参道：モードと文化が交錯する場所

表参道は、東京都渋谷区の神宮前と、港区の北青山・南青山に位置する、明治神宮へと続く参道です。この名前は、参道としての通りだけでなく、その周辺一帯をも指す通称として広く使われています。現在では、ハイブランドの旗艦店が立ち並ぶ洗練された街並みと、若者文化の発信地としての側面を併せ持つ、独特の魅力的なエリアとして知られています。

モードの発信地としての表参道

1919年に明治神宮の参道として整備された表参道は、当初からその美しい景観で注目を集めていました。しかし、1970年代以降、原宿の「kawaii文化」とは一線を画し、より洗練された「モードファッション」の中心地として発展を遂げました。銀座が大人向けの高級ブランド街であるのに対し、表参道は若年層の買い物客が多いのが特徴です。周辺エリアは「原宿・表参道」または「表参道・原宿」と総称され、常にトレンドの発信地としての役割を担っています。

1970年代まで、若者文化の発信地は新宿でしたが、1969年の新宿西口フォークゲリラ事件をきっかけに、若者は新宿を避け、渋谷や原宿へと移動しました。1973年には渋谷にPARCOが開店し、渋谷から原宿、そして表参道へと若者文化の中心が移り変わっていきました。特に1980年代には、商業主義的なサブカルチャーを好む若者が経済力を持っていたため、表参道が脚光を浴びました。DCブランドやカラス族といったファッションが流行し、表参道はモードファッションの中心地としての地位を確立しました。

表参道沿いには、ハイブランドの店舗やアパレル関連のオフィス、美容室などが集中しており、2006年には同潤会アパート跡地に表参道ヒルズが開業しました。

地域としての表参道

通りとしての表参道だけでなく、地下鉄表参道駅周辺までを含む一帯も「表参道」と呼ばれることがあります。その範囲は、青山の骨董通り周辺から、青山通り、表参道駅周辺、旧原宿・旧穏田地区の表参道沿い、そして原宿駅周辺にまで及びます。このエリアはショッピングストリートとして知られ、特に表参道沿いには世界的に有名なブランドの路面店が集まっています。一方、裏通りには、新進気鋭のセレクトショップや美容院、そして閑静な住宅街が混在し、若者に人気のエリアとなっています。

表参道と周辺地域との繋がり

表参道は、渋谷区の原宿、裏原宿、代官山、そして渋谷と密接な関係があります。それぞれの地域は異なる文化を発信しており、互いに影響を与え合っています。

• - 表参道: モード文化の発信地。世界的なハイブランド店が軒を連ね、ファッション雑誌に登場するような最先端のファッションが常に注目されています。
• - 原宿: 「kawaii」文化の発信地。竹下通りには若い女性向けのショップが集まり、独特のファッションやカルチャーが生まれています。
• - 裏原宿: サブカルチャーの発信地。1990年代の「渋谷系」に代表されるように、個性的なショップやアートが点在しています。
• - 代官山: 洗練された大人のオシャレ文化の発信地。落ち着いた雰囲気のカフェやショップが多く、高級住宅街としても知られています。
• - 渋谷: 若者とIT文化の発信地。若者が多く活躍するIT企業が集まり、常に新しいトレンドが生まれています。

これらの地域が互いに連携し、東京のファッションと文化を牽引しています。

通りとしての表参道

現在の都道413号線の一部である表参道は、全長約1.1キロメートルで、青山通りとの交差点から原宿駅前付近の神宮橋交差点までを結んでいます。1919年に明治神宮の参道として完成したこの通りは、ケヤキ並木で知られ、「新・日本街路樹100景」にも選ばれています。通りには中央分離帯があり、片側2車線の往復4車線で構成されています。歩道にはケヤキの街路樹が植えられ、四季折々の美しい景観を楽しむことができます。

表参道のケヤキ並木は、大正時代に植えられたものが、第二次世界大戦の空襲で焼失した後、1950年頃に植えなおされたものです。ただし、一部には戦火を免れた樹齢90年を超えるケヤキも残っています。2020年には「表参道ケヤキ並木道」が土木学会選奨土木遺産に選ばれました。

表参道の道は、起点と終点に対して中央部が谷底になる地形です。道路建設の際には、自然地形に合わせて坂が造られ、切り通しや石垣が見られます。

また、表参道は冬至の朝に、明治神宮から青山通りの交差点に向かって太陽が真直ぐ昇るように設計されています。

表参道の歴史

表参道は、明治神宮創建の際に、参道として整備されました。当初の計画では、現在の馬車道が参道となる予定でしたが、正鳥居の位置が変更されたため、現在の表参道が整備されることになりました。1919年に東京市によって整備され、翌年には路線バス「表参道バス」が運行を開始し、さらにその翌年にはケヤキの若木が植樹されました。

戦後、表参道周辺にはアメリカ人向けの店ができ、朝鮮戦争を機に繁栄しました。その後、表参道はファッションの通りへと変貌していきました。1970年代には若者文化の発信地として活気を得、高級ブランド店が集積するようになりました。

表参道は、1972年に地下鉄が開業し、1974年には中央分離帯が設置されました。1977年頃には暴走族の集結地にもなりましたが、その後の法改正や取り締まりにより解消されました。2006年には、同潤会青山アパート跡地に表参道ヒルズが開業しています。

表参道のイルミネーション

1991年から年末年始には、表参道のケヤキ並木を電飾するイベントが開催されていましたが、交通渋滞などの問題から1998年に中止されました。その後、一時的な代替イベントを経て、2009年からケヤキ並木への本格的な電飾が復活しました。表参道のイルミネーションは、仙台市の「SENDAI光のページェント」と交流があり、東日本大震災の際には、表参道が電飾を貸し出して被災地を支援しました。

表参道の延長区間

表参道の入口である表参道交差点の手前には、根津美術館方面に続く「御幸通り」があり、太平洋戦争前には未整備でしたが、現在は表参道と同等の幅員を持っています。また、表参道の終点である神宮橋交差点から代々木公園の南端を経て富ヶ谷方面に向かう道路も、都道413号線の一部です。

表参道は、その歴史、文化、そしてファッションを通じて、常に東京のトレンドを牽引する重要な場所です。

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