袁渙

袁渙（えん かん）

袁渙（生没年不詳）は、後漢末期から三国時代の魏にかけての政治家で、字は曜卿（ようけい）。豫州陳郡扶楽県（現在の河南省太康県）の出身です。彼の父は後漢の司徒であった袁滂（えんぼう）であり、子には袁侃（えんかん）、袁㝢（えんう）、袁奥（えんおう）、袁準（えんじゅん）らがいます。また、子孫には袁瓌（えんき）、袁宏（えんこう）、袁耽（えんたん）などがいます。袁紹（えんしょう）らで知られる汝南袁氏（じょなんえんし）とは直接的な繋がりはありません。

生涯

袁術・呂布の配下として

若い頃から地方官を歴任し、建安元年（196年）には劉備（りゅうび）から茂才（秀才）として推薦を受けました。その後、袁術（えんじゅつ）に仕え、常に正論を述べたため、袁術からも敬意をもって遇されました。

しかし、建安2年（197年）に袁術が呂布（りょふ）に敗北した際、袁渙は捕虜となり、呂布に仕えることになります。ある時、呂布は袁渙に劉備を罵倒する手紙を書かせようとしましたが、袁渙はこれを拒否しました。呂布は武器を突き付けて無理やり書かせようとしましたが、袁渙は顔色を変えることなく、「人を辱めることを文書で行っても、劉備公の徳が高ければ、辱められるのはあなた自身です」と冷静に説得しました。これを聞いた呂布は恥じ入り、強要することを止めました。

建安3年（198年）12月、呂布が曹操（そうそう）によって滅ぼされると、陳羣（ちんぐん）ら他の降伏者たちが曹操に平伏する中で、袁渙だけは曹操と対等の挨拶をしました。また、曹操が降伏者に物資を分け与えた際、他の者が車一杯に物資を詰め込む中で、袁渙は書籍数百巻と僅かな食料だけを受け取りました。これらのことから、袁渙は曹操から大いに尊重されるようになりました。

曹操配下として

曹操の下では、沛郡南部都尉（はいぐんなんぶとつい）、梁国相（りょうこくしょう）、諫義大夫兼丞相軍祭酒（かんぎたいふけんじょうしょうぐんさいしゅ）、郎中令兼行御史大夫事（ろうちゅうれいけんぎょうぎょしたいふじ）などの要職を歴任し、主に内政面で献策を行いました。忠義に厚い人物として名声が高く、清貧で慎重な人柄であり、教化訓戒を第一に心がける政治を行ったため、人民から深く慕われました。また、ある時、劉備が亡くなったという噂が流れた際、他の官僚たちが慶賀する中で、袁渙は一人それを祝いませんでした。

袁渙が亡くなると、曹操は涙を流して悲しんだと伝えられています。没年は不詳ですが、曹操が魏王となった建安21年（216年）から曹操が没した建安25年（220年）までのいずれかの年であると考えられています。東晋の袁宏（えんこう）が著した『三国名臣序賛』（『文選』に収録）では、魏の9人、蜀の4人、呉の7人が名臣として賞賛されており、袁渙もその一人として名を連ねています。

小説『三国志演義』には登場しません。

参考文献

『三国志』魏書11 袁渙伝
『三国志』魏書2 文帝紀
* 『三国志』魏書13 華歆伝

もう一度検索