裴玄

裴玄（はい げん）は、中国後漢末期から三国時代の呉にかけて活躍した政治家であり、学者でもありました。字（あざな）は彦黄（げんこう）。徐州下邳郡（じょしゅう かひぐん）の出身です。生没年ははっきりとは分かっていません。

生涯

裴玄は、厳畯（げんしゅん）や張承（ちょうしょう）といった当時の知識人たちと、春秋時代の名宰相・管仲（かんちゅう）や、孔子の高弟・子路（しろ）について議論を交わしたことで、その名が広く知られるようになったと伝えられています。彼は学問に励み、立派な行いを心がけていたとされ、その才能と人柄が認められ、孫権（そんけん）に仕えることになりました。呉では太中大夫（たいちゅうたいふ）という高い位まで昇進し、孫権の側近として活躍しました。

裴玄は、子の裴欽（はいきん）に、桓公（かんこう）、文公（ぶんこう）、伯夷（はくい）、柳下恵（りゅうかけい）という、古代中国の四人の人物について、誰が最も優れているか尋ねたことがあります。裴欽は自分の考えを述べ、裴玄との間で議論が交わされました。二人の議論は、言葉遣いが美しく、道理にもかなっていたと伝えられています。

孫権の太子の孫登（そんとう）は、陸遜（りくそん）らの補佐を受け、武昌（ぶしょう）において政治に携わっていました。ある時、孫登は歩騭（ほしつ）に、荊州（けいしゅう）の人々について意見を求めました。歩騭は、荊州において功績を挙げた呉の人物を11名ほど列挙し、斉（せい）や前漢（ぜんかん）における賢人登用の事例を挙げて、孫登に賢人を用いるよう忠告しました。この時、歩騭が列挙した荊州で功績を挙げた人物の中に、裴玄も含まれていたとされています。これは、裴玄が荊州方面においても、その能力を高く評価されていたことを示しています。

裴玄は、学問に通じ、人格的にも優れていたため、孫権に重用され、太子の孫登からも評価されるなど、呉の政治において重要な役割を果たしました。彼の生涯は、学問の重要性、人材登用のあり方、親子間の議論のあり方など、現代にも通じる様々な教訓を与えてくれます。

参考文献

* 陳寿、裴松之注『正史 三国志』、井波律子・今鷹真・小南一郎 訳・解説（ちくま学芸文庫全8巻、1992 - 93年）、※呉書は6・7・8巻、小南一郎訳。

脚注

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