襄陽の戦い

襄陽の戦い：孫堅の死と荊州の命運

襄陽の戦いは、後漢末期の191年に孫堅と劉表の間で繰り広げられた戦いです。反董卓連合の瓦解後、袁紹と袁術の対立が激化し、劉表が袁紹と同盟を結んだことから、袁術は配下の孫堅に劉表の勢力下にある襄陽攻略を命じました。

戦いの背景

191年4月、董卓が洛陽を焼き払い長安へ逃れると、各地の諸侯はそれぞれの勢力拡大を目指し争いを始めました。袁紹と袁術もその例外ではなく、互いに対立を深めます。袁紹は劉表と、袁術は公孫瓚とそれぞれ同盟を結び、中国南部における袁紹の影響力を排除しようとした袁術が、孫堅に襄陽攻撃を命じたのが、この戦いの発端です。

襄陽は漢水を挟んで樊城と対峙する戦略上の要衝であり、その重要性から三国時代においても争奪戦が繰り返されました。

戦いの経過

袁術の命を受けた孫堅は、南郡へ進軍を開始。劉表は黄祖を樊城へ派遣し、迎撃体制を敷きます。しかし、孫堅軍の猛攻の前に黄祖は敗北し、樊城は陥落。黄祖は襄陽へ逃れ、孫堅は漢水を渡河して襄陽城を包囲します。

劉表は兵力補充のため黄祖に徴兵を命じ、黄祖は夜に紛れて襄陽城を脱出。兵を集めますが、孫堅は黄祖の動きを読んでおり、待ち伏せして襲撃します。黄祖は峴山に逃げ込み、孫堅は追撃しますが、黄祖の部下が放った矢が孫堅に命中。孫堅は戦死し、孫堅軍は撤退を余儀なくされました。

劉表軍の方が戦死者は多かったものの、結果として劉表は荊州を守り抜きました。

戦後

孫堅の死後、配下の桓階が劉表に孫堅の遺体の引き渡しを交渉し、劉表は桓階の義に感じ入り、これに応じました。孫堅軍は一時的に甥の孫賁が引き継ぎ、袁術の傘下に入ります。

劉表は襄陽の戦いの勝利によって、荊州における影響力を拡大。後に、孫堅の息子である孫策が江東で勢力を確立すると、父の仇として劉表を攻撃し、その抗争は孫権の代まで続きます。しかし、劉表は208年に亡くなるまで荊州の支配を維持しました。

三国志演義における襄陽の戦い

三国志演義では、孫堅が洛陽の井戸から伝国璽を発見し、野心を抱くようになったという脚色が加えられています。孫堅は玉璽を隠匿したことを疑われ、弁明のために嘘をつきますが、袁紹が証人を呼んだことで窮地に陥り、洛陽から逃亡。袁紹は劉表に孫堅を攻撃させ、玉璽を奪おうとします。

長沙に帰還した孫堅は、劉表に恨みを抱き、袁術の命令で江夏攻略に向かいます。樊城を落とし、襄陽を包囲しますが、蒯良の策略によって伏兵にかかり、落石によって命を落とします。孫堅の遺体は劉表軍に奪われますが、捕虜となっていた黄祖との交換で孫策のもとに返還されました。

もう一度検索