西カリマンタン州:多様な歴史と自然が織りなすインドネシアの地
西カリマンタン
州は、
インドネシアのカリマンタン島に位置する
州の一つです。
州都
ポンティアナックは
赤道直下に位置し、その地理的特徴が地域の気候や文化に大きな影響を与えています。この
州は、経済発展が比較的遅れている地域の一つですが、豊かな自然と多様な文化が共存する魅力的な場所です。
地理
西カリマンタン
州の地形は、カプアス川の流域が大部分を占めています。
州の境界線は、カプアス川の分水嶺となる山脈とほぼ一致しています。この地形は、地域の交通や生活様式に大きな影響を与え、河川は重要な交通路として利用されてきました。
行政区分
西カリマンタン
州は、2つの
市(コタ)と12の
県(カブパテン)から構成されています。
市
ポンティアナック - Pontianak
シンカワン - Singkawang
県
ベンカヤン県 - Kab. Bengkayang
源流カプアス
県 - Kab. Kapuas Hulu
北カヨン県 - Kab. Kayong Utara
ケタパン
県 - Kab. Ketapang
クブラヤ県 - Kab. Kubu Raya
ランダック
県 - Kab. Landak
メラウィ県 - Kab. Melawi
メンパワ
県 - Kab. Mempawah
サンバス県 - Kab. Sambas
サンガウ
県 - Kab. Sanggau
セカダウ県 - Kab. Sekadau
シンタン
県 - Kab. Sintang
これらの地域は、それぞれ異なる文化や経済活動を持ち、
州全体の多様性を形作っています。
歴史
西カリマンタン
州の歴史は、多様な
民族の移住と交流によって彩られています。元々ダヤク人が居住していましたが、17世紀には
マレー人が移住し始めました。先住民であるダヤク人が国家を形成することはなく、16世紀にはマジャパヒト王国の王子がスカダナ王国を建国しました。その後、18世紀には海岸部や河川沿いに
マレー人やブギス人が支配する港
市国家が多数成立しました。
1771年には、アブドゥルラフマーンが
ポンティアナック王国を建国し、この地域における
マレー人の影響力を強めました。また、同時期には
華人商人の流入が増え、1777年(または1840年)には
客家系
華僑による「蘭芳公司」という共和国が内陸部に成立しました。
1800年以降は
オランダ領東インドの一部となり、植民地時代を通して
民族間の対立が続きました。1942年から1945年までは日本軍の統治下に置かれ、1943年には
ポンティアナック事件が発生しました。
1960年代には、西カリマンタンは
インドネシアとマレーシアの武力紛争の舞台となり、その紛争終結後も共産党支持の武装勢力と政府軍との間で内戦が続きました。1968年以降は反マドゥラ人暴動が頻発し、多くの難民を生み出しました。
スハルト政権下では、森林資源とプランテーション開発が進められました。
1998年に
スハルト体制が崩壊すると、地方分権が進み、西カリマンタンでは地方の有力者が政治を主導するようになりました。2001年には行政区分の再編が行われ、1
市6
県から2
市8
県になりました。
近年では、2019年にカリマンタン島最大規模のキジン港が開港する予定です。
経済
西カリマンタン
州は、経済発展が遅れている地域の一つです。主な産業は農業と林業であり、森林資源を活かした開発が進められています。しかし、環境保護の観点から、持続可能な開発が求められています。
社会
西カリマンタン
州は、多様な
民族が共存する地域であり、それぞれの文化が尊重されています。しかし、過去には
民族間の対立や紛争も発生しており、社会的な課題も抱えています。
今後の展望
西カリマンタン
州は、豊かな自然と多様な文化を背景に、持続可能な開発と多文化共生を目指しています。地域の資源を有効に活用しながら、環境保護と経済発展の両立が課題となります。
参考資料
Jamie S. Davidson; Douglas, Kammen (2002). “Indonesia's Unknown War and the Lineages of Violence in West Kalimantan”. Indonesia (JSTOR) 73: 53. doi:10.2307/3351469.
松村智雄「
インドネシア西カリマンタンにおける1967年
華人追放事件の経緯」『アジア地域文化研究』第8巻、東京大学大学院総合文化研究科・教養学部アジア地域文化研究会、2012年、92-111頁。
* 生田まちよ, 竹下夏美, 牛之濱久代, 下敷領須美子「
インドネシア共和国西カリマンタン
州における妊産婦と乳幼児の食習慣に関する調査」『熊本大学医学部保健学科紀要』第7巻、熊本大学、2011年、11-23頁。