西三川砂金山

西三川砂金山：佐渡の黄金をめぐる歴史と文化

西三川砂金山は、新潟県佐渡市、かつての西三川村に位置する砂金採掘地の総称です。特筆すべきは、世界的にも珍しい埋没鉱床であるという点です。

歴史

その歴史は古く、平安時代末期の『今昔物語集』や鎌倉時代初期の『宇治拾遺物語』に記述が見られ、当時から佐渡で金が産出していたことが伺えます。

鎌倉時代から戦国時代にかけては、佐渡を統治した本間氏が、自然流出した砂金を河川で採取していました。1460年頃には尾張国の山伏が金山の位置を特定し、1555年頃には田畑を掘り返して砂金を採る手法が用いられるようになりました。

1589年、上杉景勝が佐渡を攻略すると、豊臣秀吉の命により技術者が派遣され、大規模な採集作業が開始されました。1593年頃には代官が置かれ、大山祇神社も建立されています。秀吉から景勝への下知状には、西三川の砂金を伏見や大坂へ納めるよう指示が記されています。

江戸時代に入ると、佐渡は幕府の直轄領となり、1604年には金山役所が設置され、相川の佐渡奉行所から役人が派遣されました。しかし、1872年に閉山となりました。

地誌

西三川という地名は、真野湾に面した旧三川村の西側に位置することに由来します。西三川川は日本海に注ぎますが、砂金は赤泊漁港付近から寺泊へと運ばれました。この港へ通じる山道は「金山道」と呼ばれ、西三川と三川は密接な関係にありました。

民俗学者の宮本常一によると、昭和30年代まで西三川の集落では、石川県の輪島に見られるような風避けの竹垣が見られました。笹は砂金を付着させるための原始的な漁法にも用いられ、河川敷の植生が意識的に残されていました。

特徴

西三川砂金山は、虎丸山を中心に、立残山、峠坂山など周辺の山々の総称です。笹川川と金山川で川浚いが行われましたが、水量が少ないため、江戸時代には溜池と水路が築造されました。この工事には、姫路藩出身の技術者が携わりました。水路は雛壇状に造成され、各段で砂金採りができるよう工夫されていました。この工程は「大流し」と呼ばれていました。

しかし、1769年には大規模な土砂崩れが発生し、溜池や集落が埋没する被害を受けました。また、旱魃により溜池が干上がることもあり、放棄された溜池も存在します。

江戸時代の絵図には、西三川における一連の作業の流れが詳細に描かれており、当時の様子を知ることができます。笹川集落には、庄屋宅や大山祇神社、役所跡などが残っています。また、採掘で出た巨礫は、家屋の土台や石垣に利用されました。鶴首、盥、沙板といった道具も残されています。

使われなくなった水路の一部は棚田に、溜池は農業用に転用されました。この鉱業から農業への転換は、自然回帰的な事例として海外からも注目されています。

文化財

2015年、西三川砂金山は佐渡金山、鶴子銀山とともに国指定史跡「佐渡金銀山遺跡」に追加指定されました。同年には、重要文化的景観「佐渡西三川の砂金山由来の農山村景観」として選定されています。

佐渡金山と共に世界遺産候補として推薦され、2023年には「佐渡島の金山」として推薦書が提出されました。2024年の世界遺産委員会で登録審査が行われる予定です。

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