西代藩

西代藩：河内国に短期間存在した藩

西代藩（にしだいはん、にしんだいはん）は、江戸時代中期に河内国錦部郡西代村（現在の大阪府河内長野市西代町）を拠点として存在した藩です。

立藩と藩主

1679年（延宝7年）、近江膳所藩の本多家の分家として、本多忠恒に1万石が分知されたことによって成立しました。初代藩主は本多忠恒ですが、実際に西代に陣屋を置いたのは、1711年（正徳元年）の2代藩主・本多忠統の時代です。

初代藩主：本多忠恒

本多忠恒は、膳所藩主・本多康将の実子として生まれました。康将の隠居に伴い、康将の養子である康慶が跡を継ぎましたが、これは本多家の家督を本来の嫡系に戻すための措置でした。忠恒は分家して大名となりましたが、引き続き膳所を住まいとし、参勤交代では江戸と膳所を往復しました。駿河田中城の在番や、駿府加番、京都火消役、江戸本所火消役などを歴任し、1704年（宝永元年）に江戸で没しました。

第2代藩主：本多忠統

本多忠統は忠恒の二男で、1704年（宝永元年）に14歳で家督を相続しました。徳川綱吉に小姓として仕えましたが、綱吉の死後、職を免じられました。1711年（正徳元年）に初めて知行地に赴き、西代に陣屋を構えました。忠統は荻生徂徠に学び、英明な人物として知られていましたが、新井白石による正徳の治においては、徂徠学を奉じる忠統は重用されませんでした。1719年（享保4年）には徳川吉宗によって江戸に召喚され、大番頭、奏者番、寺社奉行と昇進し、1725年（享保10年）には勝手掛若年寄に就任し、享保の改革の実施を担いました。また、文人大名としても知られています。

伊勢神戸藩への転出とその後

1732年（享保17年）、忠統は近江国の領地と河内領のうち西代村を収公され、代わりに伊勢国河曲郡・河内国錦部郡の2国2郡内で所領を与えられました。これにより西代藩は廃藩となり、忠統は伊勢神戸に居所を移し、伊勢神戸藩となりました。ただし、西代村を除く河内領は引き続き神戸藩本多家領として存続しました。

領地

1684年（貞享元年）時点での領地は、河内国錦部郡の15か村、近江国高島郡の9か村、甲賀郡の5か村でした。

西代の地理と現在

現在の河内長野市の中心地区は、高野山へ向かう交通路の要地でした。西代は長野地区の中部に位置し、西代陣屋は、現在の河内長野市立長野小学校・長野中学校およびラブリーホール（河内長野市立文化会館）の敷地にかけて存在しました。ラブリーホールには「西代藩陣屋跡遺跡」の説明板があり、長野小学校の校門は陣屋門を模しています。神戸藩への転出後も、西代村を除く河内国の所領は本多家領として継承され、長野村に役所が置かれました。

西代神楽

西代神楽（河内長野市指定無形民俗文化財）は、1732年（享保17年）に本多忠統が伊勢神戸に転出した際、その徳を偲んで西代神社に奉納したのが始まりと伝えられています。

西代藩は短期間の存在でしたが、その歴史は地域に様々な影響を与えました。

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