西廂記

『西廂記』の概要

『西廂記』（せいそうきまたはせいしょうき）は、元代の劇作家である王実甫（おうじっぽ）によって創作された雑劇です。この作品は元曲の代表作とされており、正式なタイトルは『崔鶯鶯待月西廂記』です。物語は愛と葛藤をテーマにしており、数々の登場人物たちが織りなす人間関係が描かれています。

作者とその背景

王実甫については詳しくは知られていませんが、大都に生まれ、姓は王、名は徳信、字は実甫であるとされています。彼の作品としては『西廂記』の他にも、『麗春堂』や『破窯記』が存在します。これらの戯曲は、王実甫が生きた13世紀末頃には既に形作られていたと考えられています。

作品の成り立ち

『西廂記』の起源は、唐代の作家・元稹が著した伝奇小説『鶯鶯伝』（おうおうでん）にあります。この原作は、『太平広記』の巻488に掲載され、後に多くの叢書では「会真記」というタイトルが用いられました。物語の中では、張生というキャラクターが鶯鶯という女性にひと目惚れし、詩のやり取りを通じて恋愛関係が進展していきます。

物語のあらすじ

物語は、張生が普救寺に宿泊している鶯鶯と出会うところから始まります。張生は、彼女の美しさに一瞬で魅了され、亡くなった鶯鶯の父の法要の最中に彼女と親密な関係を築いていきます。しかし、彼女はすでにいとこの鄭恒と結婚する約束があり、様々な困難が二人の間に立ちはだかります。

物語の展開の中で、張生は賊の首領である孫飛虎から鶯鶯を守るために、彼女の母である夫人に計らいを働きかけます。その結果、運命は次第に変わり、張生と鶯鶯の間には愛情が生まれていきます。

物語は、張生が科挙に合格することを条件に、彼と鶯鶯の結婚に至ることが描かれています。そして、彼らは数々の試練と誤解を乗り越えた末に、幸せな結末を迎えます。

作品の構成と特徴

『西廂記』は、一般的な元曲とは異なり、通常1つの元曲は4折から構成されますが、今回の作品は全体で21折と5つの楔子から成っています。そのため、非常に長大な戯曲となっています。さらに、すべての歌は複数の人物によって歌われるという独自の構成が魅力です。

評価と影響

この作品は、伝統的には淫書としての側面が強調され、良家の子供たちには不適切とされてきました。しかし、実際には非常に多くの読者に支持され、清末には100種以上のテクストが存在していたと言われています。明代には『南西廂記』という作品が作られるなど、影響を及ぼしました。また、金聖嘆はこの作品を高く評価し、『荘子』や『史記』に並ぶ優れた文学作品と位置づけています。

『西廂記』は、中国文学において重要な役割を果たし、人々に愛され続けています。その魅力は、単なる物語の枠を超えた普遍的なテーマ、すなわち愛、葛藤、希望といった感情に根ざしています。

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