覚性入道親王

覚性入道親王：平安時代の皇族、僧侶、そして歌人

覚性入道親王（かくしょうにゅうどうしんのう、1129年～1169年）は、平安時代後期を彩った魅力的な人物です。鳥羽天皇の皇子として生まれ、俗名は本仁親王。母は、鳥羽天皇の寵妃として知られる待賢門院（藤原璋子）です。

華麗なる誕生から出家へ

誕生からわずか3ヶ月後には親王宣下を受け、将来を嘱望された覚性入道親王でしたが、母である待賢門院の強い意向により、1135年、仁和寺の門跡である覚法法親王の下で出家。これは、待賢門院が白河法皇の追善供養と自身の将来を祈念して仁和寺の子院、法金剛院を建立した事とも関係していると考えられます。当初は信法と名乗っていましたが、後に覚性と改名しました。

仁和寺での活躍と皇族との関わり

覚性入道親王は仁和寺や法勝寺などの検校を務め、僧侶としての道を歩み始めます。1151年には、鳥羽上皇の依頼を受け、甥にあたる守仁親王（後の二条天皇）の教育・修行に関わりました。しかし、4年後、守仁親王は急遽皇太子に指名され、覚性入道親王の下を離れることになります。その後も、仁和寺法務や尊勝寺・四天王寺などの検校を歴任し、1167年には総法務職に任じられ、その地位は確固たるものとなりました。

修法の高僧と和歌への造詣

覚性入道親王は修法の技量に優れ、孔雀経法や尊勝法、愛染王法など数々の修法を24回も行ったと伝えられています。仁和寺内の居所は「紫金台寺御室」や「泉殿御室」と呼ばれ、その名残は現在も語り継がれています。また、和歌にも深い造詣を持ち、多くの歌を残しました。没後に編纂されたとされる歌集『出観集』には、彼の作品が多く収められており、『千載和歌集』を始めとする勅撰集にも入集しています。これらの作品には、泉殿という居所が深く関わっていることがうかがえます。

謎めいた私生活

『平家物語』などによると、幼少期の平経正を可愛がり、琵琶の名器を贈ったという記述が見られます。『古今著聞集』には、千手と参川（三河）という二人の寵童に関する記述があり、多様な側面を持つ人物像の一端が垣間見えます。

まとめ

覚性入道親王は、皇族としての生まれながら、僧侶として、歌人として、そして、記録に残る私生活においても、多様な顔を持つ稀有な存在でした。その生涯は、平安時代後期の社会状況や宗教、文化を理解する上で重要な手がかりを与えてくれます。謎めいた部分も多く残されていますが、歴史資料を丁寧に紐解くことで、より深くその人物像に迫ることができると考えられます。

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