覚深入道親王

覚深入道親王

覚深入道親王（かくしん にゅうどうしんのう、天正16年5月5日（1588年5月29日） - 慶安元年閏1月21日（1648年3月15日））は、江戸時代前期の皇族であり、真言宗の僧として名を残しました。後陽成天皇の第一皇子として生まれ、母は典侍・中山親子です。仁和寺の第21世門跡を務め、「後南御室」とも呼ばれました。

生涯

誕生と豊臣秀吉の思惑

天正16年（1588年）、後陽成天皇の第一皇子として誕生。幼い頃から、天下人であった豊臣秀吉は、この皇子を次の天皇に据える構想を持っていました。そのため、朝廷内では事実上の儲君として扱われ、「若宮」と呼ばれていました。秀吉は、朝鮮出兵の成功後、明を征服した際には、後陽成天皇を北京に遷し、「若宮」か八条宮智仁親王を日本の天皇にするという構想を抱いていました。

親王宣下と後継者争い

文禄3年（1594年）には親王宣下を受け、良仁親王と名乗ります。しかし、後陽成天皇は良仁親王を後継から外す動きを見せ始めます。慶長3年（1598年）頃には、弟宮が「若宮」と呼ばれるようになり、良仁親王は「親王御方」と呼ばれるようになりました。秀吉の死後、豊臣政権は、良仁親王ではなく弟である八条宮智仁親王に譲位させようと画策しましたが、後陽成天皇は三宮を即位させようとしました。

仁和寺入室と再興への尽力

慶長5年（1600年）の関ヶ原の戦いで徳川家康が勝利した後、良仁親王の御所にある番が廃止され、弟宮が親王宣下を受け、政仁親王と名乗ります。慶長6年（1601年）、良仁親王は仁和寺真光院に入室し、政仁親王が儲君に定められました（後の後水尾天皇）。

当時の仁和寺は、応仁の乱で伽藍を全焼し、辛うじて残された院家の真光院に本尊などが移されている状態でした。覚深入道親王は伽藍再建に尽力し、寛永11年（1634年）、江戸幕府に伽藍再興を願い出て認められました。上洛した徳川家光に覚深入道親王が直訴したとも伝えられています。この再建では、御所の改築と重なったため、紫宸殿や清涼殿などの建物が仁和寺に移築され、現在の伽藍が形成されました。また、真光院の古御堂は栂尾の高山寺に移築され、花園の今宮神社や宇多野の福王子神社の再興も行われました。

人物

覚深入道親王は書にも秀でており、「聖教目録」8巻を改訂しています。

墓所は仁和寺宮墓地にあります。法弟に承法法親王がいます。

参考文献

藤井讓治『天皇の歴史5 天皇と天下人』講談社〈講談社学術文庫〉、2018年。ISBN 978-4062924856。

関連項目

仁和寺門跡一覧

もう一度検索