角交換振り飛車

角交換振り飛車：角道を開放した攻めの戦法

角交換振り飛車は、将棋における振り飛車戦法の一種です。従来の振り飛車戦法が角道を止めて受ける姿勢を取ることが多かったのに対し、角交換振り飛車は角道を積極的に開け、序盤から積極的に攻めることを目指す戦法です。

角交換振り飛車の台頭：居飛車穴熊対策と新たな攻め

かつて、振り飛車は受けの戦法という印象が強く、角交換は避けられる傾向がありました。しかし、居飛車穴熊の台頭により、振り飛車の勝率が低下。藤井システムの登場で一時的に盛り返したものの、居飛車側の対策も進みました。そのような状況下で生まれたのがゴキゲン中飛車であり、中飛車に限らず角道を止めずに攻めるという新しい発想が台頭しました。そして、振り飛車側が自ら最序盤で角交換を仕掛ける戦法も生まれました。

鈴木大介氏の著書によれば、振り飛車戦法の基本目標は2枚の駒を捌くことですが、角交換振り飛車は序盤に角を交換することで、この目標を早期に達成できるとされています。後手番で1手損をする角交換は、旧来の将棋観念では考えられない作戦でしたが、一手損角換わり戦法の流行によって、序盤の1手損がそれほど大きな損失ではないという認識が広まったことが、角交換振り飛車の普及に繋がったと考えられています。また、角道を止めずに3三角と上がる指し方は1994年頃から見られ、その後角交換振り飛車と結びついて発展しました。

角交換振り飛車の基本戦略と特徴

鈴木大介氏によれば、角交換振り飛車の要点は以下の通りです。

基本的に後手番の戦法
振り飛車側が手詰まりに陥りにくい
2筋に飛車を振る向かい飛車が好ましい
左の金が玉から離れるが、玉の守りは居飛車より堅い
序盤の狙いが分かりやすい
居飛車穴熊の構築が難しくなる

2009年時点では、従来の角道を止める振り飛車はプロ棋士の間でめっきり減っていたとされています。

角交換振り飛車の具体的な戦法例

角交換振り飛車は、様々な振り飛車戦法に適用できます。以下に代表的な例を挙げます。

1. 石田流三間飛車

早石田、升田式、新・石田流など、角交換を織り交ぜた展開が特徴です。

2. 角交換型中飛車

角交換後、▲6六銀-▲7七桂-▲7八金の形で戦う中飛車。原始中飛車より反撃を受けにくく、居飛車側からの角交換に対する△3五歩～△3四角などの筋がありません。中飛車側の狙いは5五からの歩交換や、左銀を7五に配置しての8筋逆襲などです。阪口悟氏（ワンパク流中飛車）や前田祐司氏（前田流）が愛用した戦法のバリエーションも存在します。

3. ゴキゲン中飛車

丸山ワクチンと組み合わせると、自然と角交換振り飛車の様相となります。丸山ワクチンは比較的穏やかな展開となるため、乱戦を避けたい場合に有効です。ゴキゲン中飛車側は向かい飛車に転じて飛車先逆襲を目指す展開も志向されます。菅井竜也氏による△4四角の新手など、様々な工夫が凝らされています。

4. 角交換型ツノ銀中飛車

ツノ銀中飛車で、左金型から▲6五歩などの角交換を仕掛けます。松下力氏や、1975年の名人戦（大内延介対中原誠）で見られた例があります。

5. 角交換四間飛車

錆刀戦法（宗歩四間飛車）として知られる戦法。角交換から右銀を攻めに使い、4六または2八に自陣角を打って▲7五歩からの攻めなどを目指します。天野宗歩が指した棋譜があり、「宗歩四間飛車」とも呼ばれています。

6. 4五歩（6五歩）ポン

主に角道を止めるノーマル四間飛車での戦法。居飛車側の急戦対策として、△4五歩（▲6五歩）と角交換を仕掛けます。角を交換することで、急戦時の弱点である角頭攻撃からの飛車先突破を防ぎます。

7. 立石流四間飛車

8. その他

レグスペ、ダイレクト向かい飛車、阪田流向かい飛車、7八金型向かい飛車、角道オープン向かい飛車、升田流向かい飛車、大野流向かい飛車、筋違い角向かい飛車、4手目△3三角戦法、初手7八飛（△3二飛）角交換型、3三金型振り飛車、菅井流角交換三間飛車、菜々河流向かい飛車など、数多くのバリエーションが存在します。それぞれの戦法には、具体的な手順、狙い、対策などが存在します。

参考文献

先崎学; 北尾まどか『先崎学のすぐわかる現代将棋』NHK出版、2010年
鈴木大介『角交換振り飛車 【基礎編】』浅川書房〈最強将棋 (21)〉、2009年

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