角谷優

角谷 優

（かくたに まさる、1938年〈昭和13年〉 - ）は、日本の映画プロデューサーとして知られる。フジテレビジョンにおいては、映画部長、ロサンゼルス支社長、フジサンケイ・コミュニケーションズ・インターナショナル副社長といった要職を歴任した。

経歴

学生時代、特に高校から大学にかけては、池袋に存在した名画座「人世坐」系列の文芸地下で映画に深く関わった。この時期に培われた映画への情熱が、後のキャリアに繋がることとなる。

1961年4月、早稲田大学を卒業後、フジテレビにアナウンサーとして入社。当初は報道番組『FNNテレビ朝刊』などを担当していたが、自身の映画好きを活かしたいという強い希望から、同年10月には映画劇場の『テレビ名画座』へ異動。同僚の辻川一徳アナウンサーと共に、番組で使用する資料の収集、原稿執筆、選曲を手掛け、テレビにおける初の映画解説者の一人として活躍した。このほか、映画情報番組『話題の映画』の制作にも携わった。

しかし、フジテレビ内に結成された労働組合に参加し、闘争委員に選出されたことが転機となる。アナウンサーが組合の闘争委員を務めることに対し問題提起がなされ、組合脱退を求められたものの、これを拒否。結果としてアナウンサー職を離れ、1967年に新設された事業局への異動を自ら願い出た。

事業局では、フジテレビ友の会の前身である東京ハイセンスクラブの運営に協力しつつ、外国課に所属して映画事業を担当することになる。1969年からは、フジテレビが出資する映画の製作に関わり、社員監督であった五社英雄による『御用金』、『人斬り』などの作品を手掛けた。当時、映画会社間の協定（五社協定）に縛られない自由な製作を目指し、東京映画や勝プロダクションといった独立系のプロダクションとの共同製作を推進。東宝の藤本真澄氏や大映の永田雅一氏ら大手映画会社の重役とも交渉を進め、これらの作品の海外セールスも行った。

1970年、その手腕を見込まれて編成局へ移る。1971年に放送を開始した『ゴールデン洋画劇場』の担当となり、海外作品の買い付けを積極的に行い、やがて映画部長に就任した。番組編成のみならず企画にも意欲を示し、開局15周年を迎える1974年には、『人斬り』で共に仕事をした勝新太郎氏を説得し、連続テレビドラマ『座頭市物語』の実現に貢献した。

プロデューサーとして特に大きな成功を収めたのは1980年代である。蔵原惟繕監督のドキュメンタリー『キタキツネ物語』を放送し、視聴率44.7%という驚異的な数字を記録したことが縁となり、監督の弟である蔵原惟二プロデューサーから持ち込まれた企画を、再び蔵原惟繕監督で映画化した『南極物語』は、1200万人を動員し、最終的に配給収入61億円を計上。これは14年間も破られない記録となる空前の大ヒットとなった。これに続きプロデュースした市川崑監督の『ビルマの竪琴』が配給収入29億円、そして『子猫物語』が55億円を記録。当時の日本映画における配給収入記録のトップ3を独占するという快挙を成し遂げた。これらの功績が称えられ、1987年には映画プロデューサーに贈られる権威ある藤本賞を受賞した。

日本映画の製作に加えて、1985年からは『ファンダンゴ』、『サルバドル』、『ディス・イズ・マイライフ』といった外国映画の日本国内における全権利買い付けも手掛け、洋画配給事業にも深く関与した。

1987年からは活躍の場を海外に移す。フジテレビのロサンゼルス支社長として、またフジサンケイ・コミュニケーションズ・インターナショナル副社長としてアメリカ合衆国に赴任。在米日本人向けの日本語放送の普及や、ニュース取材体制の確立に尽力した。また、著名なインディーズ映画の育成機関であるサンダンス・インスティテュートの評議員に就任し、サンダンス映画祭にも積極的に参加。1994年には、ロサンゼルスに映画事業拠点としてフジサンケイ・カリフォルニア・エンタテインメントを設立し、その社長としてハリウッドでの映画企画開発を進め、売り込みを行った。3本の企画のうち1本はユニバーサル・ピクチャーズとの契約に成功するものの、映画化が実現しないまま、帰国辞令により日本へ戻ることとなった。

1996年の帰国後も、フジテレビでの映画製作に携わり、1998年に『ズッコケ三人組 怪盗X物語』、翌年には『梟の城』、そして定年を迎える2003年には『13階段』をプロデュースした。退職後も映画界との繋がりは続き、2006年にディズニーがリメイクした映画『南極物語』ではエグゼクティブ・プロデューサーとして名を連ねた。このほか、早稲田大学エクステンションセンター講師、武蔵大学客員教授として後進の指導にもあたった。

主な作品

• - 1983年7月23日 『南極物語』 - 企画
• - 1984年11月17日 『チ・ン・ピ・ラ』 - プロデュース
• - 1984年11月17日 『海に降る雪』 - 製作コーディネイター
• - 1985年4月27日 『CHECKERS IN TAN TAN たぬき』 - プロデューサー
• - 1985年7月20日 『ビルマの竪琴』 - プロデューサー
• - 1986年4月12日 『タッチ 背番号のないエース』 - 企画
• - 1986年6月7日 『熱海殺人事件』 - プロデューサー
• - 1986年7月12日 『子猫物語』 - プロデューサー
• - 1986年8月23日 『おニャン子ザ・ムービー 危機イッパツ!』 - プロデューサー
• - 1986年8月23日 『そろばんずく』 - プロデューサー
• - 1986年10月10日 『時計 Adieu l'Hiver』 - プロデューサー
• - 1986年12月13日 『タッチ2 さよならの贈り物』 - 企画
• - 1987年4月11日 『いとしのエリー』 - 企画
• - 1987年4月11日 『タッチ3 君が通り過ぎたあとに -DON'T PASS ME BY-』 - 企画
• - 1987年8月29日 『ハワイアン・ドリーム』 - エクゼクティブ・プロデューサー
• - 1987年9月26日 『竹取物語』 - プロデューサー
• - 1987年11月21日 『永遠の1/2』 - 企画
• - 1998年7月4日 『ズッコケ三人組 怪盗X物語』 - プロデューサー
• - 1999年10月30日 『梟の城』 - プロデューサー
• - 2003年2月8日 『13階段』 - プロデューサー

受賞歴

• - 第6回藤本賞
• - プロデューサー協会特別賞
• - 日本映画批評家大賞
• - 2023年度日本映画ペンクラブ功労賞

著書

• - 『映画の神さまありがとう 〜テレビ局映画開拓史〜』（扶桑社、2012年）

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