読経

読経について

読経は、仏教徒が経典を声に出して唱える行為であり、多くの宗派で行われています。この行為は「どきょう」「どくきょう」「どっきょう」とも呼ばれ、僧侶たちが共同で唱える場合は「諷経（ふうぎん）」とも称されます。読経は、経文を見ながら行う「読」と、暗唱する「誦」に分かれ、両者を合わせて「読誦」とも言われています。

読経の目的と歴史

もともと読経の主な目的は経典の学習にありましたが、時が経つにつれて修行を目的とした実践へと変わっていきました。『十誦律』にある記述からは、釈迦の時代にはすでに宗教的な意義が認識されていたと考えられています。また、智顗の『法華玄義』においては、大乗経典の読誦が重要な修行の一つとして挙げられ、善導の『観無量寿経疏』では、浄土三部経の読誦が浄土への往生の方法として位置づけられています。

さらに、中国や日本では、読経が旅の安全や国家の鎮護、五穀の豊穣、気象の制御、病気の回復、さらには怨霊の退散や鎮魂供養といった呪術的な目的でも実施されてきました。読経の宗教的な意義は、音韻研究や声明の発展へとつながり、優れた読経を行う僧は「能読」と呼ばれ、広く尊敬される存在となりました。

経典の読み方

読経の方法は多様で、清水真澄はその代表的な読み方を以下の3種類に分類しています。

1. 直読: 一部の宗派では「真読」とも呼ばれ、漢字の音読みを用います。大多数の宗派は呉音読みを採用していますが、天台宗の「阿弥陀経」や真言宗の「理趣経」など特定の経典では漢音を使う場合もあります。

2. 訓読: 漢文を訓読みで読誦します。

3. 転読: 経題と中間の数行、巻末を読み上げて一巻を完了する方法です。特に儀礼の場においては、読み終えた折り本をアーチ状にくるなど、宗派ごとに異なる形式があります。また、修験道や密教における七五三読みもこの一種と言えます。

そのほか、声を発さず内に響かせる「無音」や、道場を巡りながらの読誦、羽黒修験道で見られる経典を後ろから読む「逆さ経」も行われます。また、木魚や太鼓などの打楽器を用いてリズムを取ることもあります。さらに、宗派によっては認可されていない民俗的な読経の形態も存在する可能性があります。

読経は単なる経典の朗読ではなく、信仰や修行の重要な一部です。その形式や方法は多岐にわたり、各宗派の特色を反映しています。

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