諏訪円忠

諏訪円忠（すわ えんちゅう/おさか えんちゅう）は、永仁3年（1295年）に生まれ、貞治3年（1364年）に没した、鎌倉幕府と室町幕府に仕えた奉行人です。京都諏訪氏の祖としても知られています。彼は『諏方大明神画詞』の著者としても有名です。

人物

信濃国諏訪郡で生まれた諏訪円忠は、諏訪盛忠の子であり、諏訪大社上社の支族でした。しかし、埴科郡四宮荘船山郷の地頭であった小坂氏を継いだため、小坂円忠とも呼ばれました。また、越中国高木村や近江国三宅郷十二里村・赤野井村の地頭職も所領としていました。諏訪氏は北条氏の得宗被官であり、叔父の諏訪時光も鎌倉幕府の奉行人であった関係から、円忠は時光の養子となり、鎌倉で元服しました。

北条氏が滅亡した後、円忠は京都へ上り、夢窓疎石の仲介で足利尊氏に仕えることになりました。室町幕府では評定衆、守護奉行、そして天竜寺の造営奉行を歴任しました。その後、禅律方奉行人として主に禅宗寺院関連の案件を担当しました。また、中先代の乱後に衰退した諏訪宗家の再興にも尽力し、諏訪上社の花会が信濃一円の武士の御頭奉仕で行われるようにしました。

延文元年（1356年）、円忠は尊氏の奥書を持つ『諏方大明神画詞』を完成させ、当時の公家社会をはじめとする各方面に諏訪信仰を広めました。さらに、尊氏が発願した一国一寺の安国寺利生塔創建においては、信濃安国寺を諏訪上社の近くに建立し、夢窓疎石を開山者としました。

また、円忠は諏訪神党祢津氏が相伝した鷹匠の秘術の故実を受け継ぎました。この秘術は、子孫である京都諏訪氏の惣領に代々伝えられ、文明5年（1473年）には飛鳥井氏と諏訪忠郷が鷹に関する和歌に註釈をつけて将軍足利義政に披露しました。忠郷の子である諏訪貞道も、『鷹聞書少々』という鷹狩の故実書を編纂しています。

円忠は、武士としての活動だけでなく、和歌や連歌にも才能を発揮しました。『新千載和歌集』、『新後拾遺和歌集』、『菟玖波集』には、彼の作品が選ばれています。

関連項目

諏訪氏
四宮荘

参考文献

『長野県歴史人物大事典』 郷土出版社、1989年
『信州の人物余聞』ほおずき書籍、2010年

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