護軍都尉

護軍都尉（ごぐんとい）は、古代中国の官職であり、その起源は秦の時代に遡るとされています。前漢の武帝の時代、具体的には元狩4年（紀元前119年）に、大司馬という官職に所属するようになりました。この時点から、護軍都尉は大司馬の指揮下で軍事的な任務を担っていたと考えられます。

その後、成帝の綏和元年（紀元前8年）には、丞相司直が丞相府に所属するのと同様に、護軍都尉も大司馬府に所属することになりました。これは、護軍都尉の役割や地位が、より明確に大司馬の管轄下にあることを示すものと考えられます。

しかし、哀帝の元寿元年（紀元前2年）には、護軍都尉は司寇（しこう）と改称されました。この改称は、護軍都尉の職務内容や役割の変化を反映している可能性があります。司寇は、一般的に司法や刑罰に関する職務を担う官職であるため、護軍都尉が軍事的な任務から、より司法的な任務へと移行したことを示唆しているかもしれません。

さらに、平帝の元始元年（1年）には、司寇は再び護軍と改称されました。この再度の改称は、職務内容が再び軍事的なものに戻ったのか、あるいは単に名称が変更されただけなのかは、資料からは明確には判断できません。

王莽が新を建国し、官制を大幅に改革した際には、大司徒の属官として大司徒司直、大司空の属官として大司空司若、大司馬の属官として大司馬司允が置かれました。この官制改革によって、護軍という名称は歴史から姿を消すことになります。王莽の新における官制改革は、従来の官職の名称や役割を大きく変更するものであり、護軍の廃止もその一環であったと考えられます。

後漢の時代になると、護軍都尉という官職は再び設置されることはありませんでした。これは、後漢の官制が前漢とは異なる体系を採用したためと考えられます。護軍都尉の役割は、他の官職に引き継がれたか、あるいは廃止された可能性があります。

参考文献として、（後漢）班固著、（唐）顔師古注『漢書』巻19上百官公卿表上、巻99中王莽伝中が挙げられます。これらの文献は、護軍都尉に関する記述が含まれており、その歴史や役割を理解するための重要な資料となります。

護軍都尉は、その名称や所属、職務内容が時代とともに変遷した官職であり、古代中国の官制の複雑さを示す一例と言えるでしょう。

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