豊似駅

豊似駅（とよにえき）

豊似駅（とよにえき）は、かつて北海道広尾郡広尾町字豊似に所在した、日本国有鉄道（国鉄）広尾線の鉄道駅（廃駅）です。十勝管内の広尾町に設置されており、電報略号は「トニ」、事務管理コードは▲111513が付与されていました。

歴史

豊似駅は、1932年（昭和7年）11月5日に開業しました。これは、広尾線のうち大樹駅から広尾駅までの区間が延伸され、同線が全通した際に新設された駅の一つで、当初は貨物や荷物も取り扱う一般駅として運営が開始されました。

時代の流れとともに駅の機能は縮小され、1974年（昭和49年）12月15日には貨物および荷物の取扱いが廃止されました。これと同時に駅は無人化され、駅員による窓口業務などは行われなくなりました。

そして、特定地方交通線に指定されていた広尾線がその役割を終えることになり、1987年（昭和62年）2月2日の路線の全線廃止に伴い、豊似駅もまた他の多くの駅とともに、その34年あまりの歴史に幕を下ろし廃駅となりました。

駅名の由来

駅名の「豊似」は、その所在地の地名から取られました。この地名は、現在の豊似川が持つアイヌ語名に由来すると考えられています。一般的に有力視されているのは、「トイオイ（toy-o-i）」というアイヌ語で、「トイ」は「土」、「オ」は「ある」、「イ」は「ところ」を意味し、全体で「土があるところ」を意味するという説です。

ここでいう「トイ（toy）」が具体的に何を指すかについてはいくつかの解釈が存在します。一つには、アイヌの人々が古くから食用として利用していたといわれる珪藻土が採取できた場所を指すという説です。しかし、他方で、単に川の水が泥を含んで濁りやすく、「泥水ばかりが出る川」であったという説も存在します。

アイヌ語研究者の山田秀三氏は、「豊似」という漢字の当て字から、「トイオイ」と似た発音でありながら少し異なる「トユニ（toy-un-i）」も語源として考えられる可能性を指摘しています。

駅構造

豊似駅は地上駅として建設されました。開業当初は、列車交換が可能な相対式ホーム2面2線を有する構造でしたが、利用状況の変化に伴い駅機能が縮小され、廃止時点では線路の西側（広尾駅に向かって右側）に配置された単式ホーム1面1線のみが使用されていました。

かつて交換駅だった頃の使われなくなった線路は、運用廃止後も側線として残されましたが、1983年（昭和58年）にはホームが撤去されていました。

また、本線から分岐し、駅舎北側のホーム切り欠き部分にある貨物ホームへ続く貨物側線も1線設けられていました。

駅は無人化されていましたが、かつて有人駅だった頃に建てられた駅舎は廃止時までそのまま残っていました。駅舎は構内の西側にあり、利用されていた単式ホームに隣接していました。

利用状況

特定年度における利用状況を示すデータとして、1981年度（昭和56年度）における一日あたりの平均乗降客数は50人でした。

駅周辺

駅周辺には、広尾国道、天馬街道、野塚国道とも称される国道236号や、ナウマン国道と呼ばれる国道336号といった主要な道路が通っています。また、北海道道238号更別幕別線も近隣を通っています。生活関連施設としては、豊似郵便局や広尾町立豊似中学校などがありました。現在も、十勝バスの「豊似」停留所が設置されており、かつての駅勢圏の交通を担っています。

駅跡

駅の廃止後、その敷地はどうなったのでしょうか。1999年（平成11年）の時点で、駅のホームや線路といった鉄道関連の施設は全て撤去されており、跡地は荒れ地となっていました。この状況は、その後も大きな変化はなく、2010年（平成22年）の時点でも同様であったと記録されています。

隣の駅

日本国有鉄道 広尾線

• - 石坂駅
• - 豊似駅
• - 野塚駅

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